研究課題/領域番号 |
23700642
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
水谷 謙明 藤田保健衛生大学, 藤田記念七栗研究所, 助教 (30351068)
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キーワード | 脳梗塞 / リハビリテーション / 薬物併用療法 / 神経可塑性 / 機能回復 |
研究概要 |
近年、脳卒中後の麻痺や障害に対して、脳の可塑性変化に基づいた新たなリハビリテーションという概念が浸透し始め、積極的に麻痺回復を行う治療戦略に関心が高まりつつあるが、脳内の分子機構などについては未だ不明な点が多い。 我々はこれまでに、運動機能回復に関わる脳内機能的分子の検出を目的として、脳梗塞モデル動物を用い、運動訓練による運動機能の回復過程を観察するとともに、大脳皮質における網羅的解析により、NGF, PKC, GAP43などのup-regulationが観察され、機能回復に至る脳内の分子機構にこれらの物質が関与している可能性について報告してきた。 そこで本年度は、脳梗塞モデルラットを用いて運動訓練の有無による機能回復の程度の差と神経活動との関連性について探るために、神経活動依存性に発現が誘導されるc-Fosを指標に、運動学的解析後の脳内の活動領域の可視化を行うとともに、PKCの局在解析を行った。 脳梗塞手術2日後から回転ケージによる自発訓練を行った群をExercise (EX) 群、訓練を行わなかった群をControl (CNT) 群とし、脳梗塞前と梗塞後経時的にRotarod testによる運動学的機能評価を行った。その結果、CNT群と比較してEX群において、脳梗塞後6日目に歩行持続時間の有意な増加が認められ、自発運動訓練が運動機能の改善に有用であったことが示唆された。 そこで脳梗塞6日後、Rotarod testを行った後に灌流固定を行い、脳組織を採取、薄切後にc-Fos, PKC抗体を用い、その局在について解析した。c-Fosの発現については、CNT群と比較してEX群で脳梗塞周囲の発現増加が認められた。PKCの局在解析ではEX群で、大脳皮質第2/3層での免疫反応性の増加が認められさらに、大脳皮質神経細胞において膜局在が観察され、PKCの活性化が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は当初、ヒトの脳梗塞に比較的近似した、中大脳動脈閉塞再灌流による脳梗塞モデル作製を計画していたが、梗塞巣サイズのばらつきが大きいことが問題であった。麻痺程度の層別化によりある程度解決される問題ではあるが、今後の実験への効率化を考慮し、Photothrombosis による脳梗塞モデルへの変更を行った。そのため、梗塞領域の大きさや位置などの設定、麻痺程度および運動機能障害の評価、回復過程における運動機能評価など基礎的事項の検討に多くの時間が費やされた為と考える。但し、24年度中には訓練・薬物投与の有無及び投与量などの検討を開始し、一部で運動機能回復が誘起されていることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、脳梗塞モデル作製の技術的確立、各種運動訓練方法および、運動機能評価法などの検討を行い、これらの基礎的検討事項から得られた結果を基に、訓練方法・強度・評価法などを決定した。そして、更なる運動機能回復を目指し、薬物併用療法の検討を開始するに至った。 今後の研究の推進方策については、これまでの研究により検出された、脳梗塞後の運動機能回復に関わる候補分子について、機能的活性化を目的とした薬剤投与を行い、麻痺および運動機能の回復程度を確認しながら最適な投与時期および投与量を決定し、例数を増やすとともに精緻化を行う。さらに、麻痺評価および運動学的機能評価において有意差が得られた時点における脳組織からタンパク質を抽出し、Immunoblottingなどを用い発現比較解析を行い、運動訓練および薬剤投与により増強される分子機構の解明を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
薬剤投与による運動機能回復に関連した脳内分子機構解明のための解析を計画している。物品費に関しては、実験動物を対象としているため、実験動物の育種に関わる経費および薬剤購入費用を計上する。また実験経費に関しては、タンパク発現解析関連の試薬・消耗品が中心でありタンパク発現の比較解析としてImmunoblottingおよび発現の局在解析として免疫染色用の抗体購入費用を予定している。
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