研究課題/領域番号 |
23700648
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
大歳 太郎 関西福祉科学大学, 保健医療学部, 教授 (40336483)
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キーワード | 広汎性発達障害 / 自閉症スぺクトラム / 発達障害 / 協調運動 / 絵カード / 視覚優位 / タッチパネル / 作業療法 |
研究概要 |
本年度は,1.広汎発達障害児に対して,昨年度作成した日常生活で行う活動である「線引き」「はし」「直線歩行」の手順支援と新たに「はさみ」の手順支援課題を用いて実施し,モーションセンサを用いた協調運動の評価が実施可能か否かを検討すること,2.各市町村の保育園や幼稚園の気になる子どもの実態について調査することで,当該支援における保育士の自信につながるか否かの資料を得ること,とした. 結果,1.協調運動評価について,(1)「直線歩行」「継ぎ足歩行」課題では,年齢が低くても手順支援を確認しながら模倣することができ,腰部にモーションセンサをつけるのみであったため問題なく可能であったこと,(2)「線引き」「はし」「はさみ」課題は,年齢に応じて把持形態を数パターンに分類することで,手順支援が可能であった.「はし」課題に関して,手順支援を用いた段階的な介入は,知的レベルが軽度群において十分に効果があり,重度群でも有意差が認められないものの箸練習の経過で移動個数は増加し,箸の使用状況にも変化を認め,一定の効果を示すことが示唆された.一方,各課題における協調運動の質がすべて同質であると言えない側面があるため,関連性を持たせることができる協調運動評価の一部を再検討する必要が生じた.2.保育園・幼稚園における気になる子どもについて,気になる子の担当経験は多く(79.5%),他専門家との連携の必要性を感じているが(98.3%),必要な知識や情報を得る機会が不十分(72.2%)と感じていることが示された.また,担当したことがない保育士の不安度得点が,担当したことのある保育士の不安度得点よりも有意に高かった(p<0.0001)ことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,モーションセンサを用いて昨年度の手順支援を発展させるべく課題の予備実験を行うことができた。結果,一部の課題について低年齢でも使用でき,手順支援の有効性を明らかにすることができた.また,保育士に対する気になるこどもへの自信度を評価した結果,担当の有無が自信度に影響を及ぼすため,専門性をもった職種が関わることで自信度が上がる可能性があり,当該支援を実施することに意義がある結果を得た. 一方,手を使う課題に関する協調運動評価において,個々の評価は可能であるものの関連性を持たせる必要があることに関して,一部再検討する必要が生じた.これについては,現在各課題の解析を行い,その関連するポイントを検討している段階である. これらのことから,現在までの達成度について,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,最終年度となるため,現在作成済みの手順支援の方法及び一部を改訂した協調運動評価を用いて,精神発達年齢別及び協調運動能力別に,データを増やし,数回に分けて実施する. データ収集の時期について,児の能力を最大限に発揮できると思われる夏休み期間(7,8月)に実施する.検査・測定内容が,精神発達年齢,マッチング課題,協調運動の評価と多岐にわたる.そのため,児の状況に応じて,数回に分けて検査・測定を実施する.また,対象児の負担を減らし研究を円滑に実施するために,データ収集の際には大学院生及び学生を一時的に研究補助者として雇用する研究体制をとる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の主要な研究費は,調査旅費,謝金,成果発表旅費である. 備品については, 9軸ワイヤレスモーションセンサとタッチパネルPCを購入済みである.一部インターフェイスが必要なことから,これに関連する費用を計上する. 旅費は,データ収集における交通費,及び国内での成果発表旅費である. 謝金は,データ収集における対象児及び研究補助者への謝礼である.特に本年度はデータ収集を多施設で実施するため,調査旅費と謝金が研究費の主要部分を占める.
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