研究概要 |
本研究の目的はパーキンソン病患者の歩行開始および過渡期の運動学的指標の異常性に対する全身振動トレーニング(Whole body vibration training: WBV)の効果をランダム化クロスオーバー試験により解明することとする。対象はパーキンソン病患者14名とし,WBV-コントロール介入群,コントロール介入-WBV群に7名ずつ無作為に割り付けた。WBVでは,対象者は全身振動トレーニング装置上にて立位をとった。WBVは6Hzの振動刺激にて1セッション1分間,5セッション,計5分間実施した。コントロール介入では,対象者は全身振動トレーニング装置にて振動刺激を与えられずに,WBVと同一肢位にて同一時間立位をとった。全対象者にWBV,コントロール介入を同一日に実施し,各介入の間には30分以上の休憩時間を設けた。評価項目はTimed up and go test(TUG),歩行開始動作時の運動学的指標とした。評価は,ベースライン,WBV後およびコントロール介入後に実施した。TUGならびに歩行開始時の運動学的指標はWBV,コントロール介入後有意な改善が認められなかった。しかし,すくみ足の重症度スコアが12/24以上の重度すくみ足群とそれ以下の非重度すくみ足群に分けて検討すると,重度すくみ足群においてのみWBV後TUG,歩行開始時の予測的姿勢制御における足圧中心の側方移動距離の有意な改善が認められた。本研究結果は,WBVはすくみ足が重度なパーキンソン病患者において歩行開始動作を改善させる効果を有する可能性を示唆するものである。
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