研究課題/領域番号 |
23700655
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
松嶋 康之 産業医科大学, 医学部, 講師 (10412660)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ポリオ / ポリオ後症候群 / リハビリテーション / 酸化ストレス / 8-ヒドロキシデオキシグアノシン |
研究概要 |
【目的】ポリオ後症候群(PPS)はポリオ罹患後数十年経て新たに筋力低下や筋萎縮が起こる病態である。PPSの原因として加齢や過用、炎症などが考えられているが明確ではない。PPSの正確な診断を臨床所見のみで行うことは難しく、診断のための生物学的マーカーの確立が望まれる。最近、PPS患者の脳脊髄液では炎症に関与するマーカーとともに酸化ストレスの防御因子が増加していることが報告されており(Gonzalez H, et al. J Proteomics 71:670-81, 2009)、酸化ストレスはPPS発症に関与している可能性がある。今回、我々はポリオ罹患者と健常者で酸化ストレスの指標を測定し比較したので報告する。【対象と方法】ポリオ罹患者13名(男性6名、女性7名、58.2±5.1歳)と健常者7名(男性3名、女性4名、58.7±5.2歳)を対象とした。安静空腹時の採血、採尿を実施し、血中クレアチンキナーゼ(CK)、血中ミオグロビン、DNAの酸化障害の指標である尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)を測定し2群間で比較した。【結果】筋損傷を反映する血中CK値および血中ミオグロビン値は健常者とポリオ罹患者で有意差を認めなかった。一方、尿中8-OHdG値は健常者で4.0±1.4ng/mg、ポリオ罹患者で7.4±4.8 ng/mgとポリオ罹患者で上昇している傾向を認めた。【考察】ポリオ罹患者でDNAの酸化障害が多いことがPPSの発症に関与している可能性がある。尿中8-OHdGはPPS発症のリスクファクターや診断の生物学的マーカーとなる可能性があり、今後より詳細な検討を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度、24年度2年間で、ポリオ罹患者20名、ポリオ罹患者と年齢・性をマッチさせた健常者20名の対象者を集める予定であった。平成23年度はポリオ罹患者13名と健常者7名を対象に安静空腹時の採血、採尿を実施し、血中クレアチンキナーゼ(CK)、血中ミオグロビン、DNAの酸化障害の指標である尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)を測定できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度から引き続き、ポリオ罹患者とコントロール群を目標人数に達するまで募り、検体の採取、身体計測、問診票の評価を行う。得られたサンプルが5名以上集まってから随時、血液中と尿中の酸化ストレスの指標について生化学的指標を用いて測定する。得られたデータについて、ポリオ罹患者と健常者での酸化ストレスの指標の比較、ポリオ罹患者の中でポリオ後症候群を発症している群と発症していない群で酸化ストレスの指標の比較を行う。身体症状や障害レベルの影響を考慮した統計学的な解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
血液中と尿中の酸化ストレスの指標について生化学的指標を用いて測定するために、消耗品費として実験用試薬、実験用器具を購入する。学会に成果発表を行うために旅費とその他の費用を使用する。
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