【背景】ポリオ後症候群(PPS)の原因は明確ではないが、最近PPS患者の脳脊髄液では酸化ストレスの防御因子が増加していることが報告されており、酸化ストレスがPPS発症に関与している可能性がある。 【対象と方法】ポリオ罹患者27名(男性12名、女性15名、59.3±5.1歳)と健常者13名(男性4名、女性9名、58.0±5.8歳)を対象とし、安静空腹時に採血、採尿を実施し、酸化ストレスの指標について測定し比較した。 【最終年度に実施した研究の成果】脂質過酸化反応の指標である尿中8-isoprostaneをELISA法にて測定した。ポリオ罹患者を臨床的にPPSと診断されたPPS群(n=8)とPPSと診断されなかったnon-PPS群(n=19)に分類し、各群の8-isoprostane値を比較した。尿中8-isoprostane値は、PPS群で健常者やnon-PPS群と比較し有意に高値であった。 【研究期間全体を通じて実施した研究の成果】ポリオ罹患者と健常者を対象にDNAの酸化障害の指標である尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)、脂質過酸化反応の指標として血漿中thiobarbituric acid reactive substance(TBARS)、尿中8-isoprostaneを測定した。血漿中TBARS値は群間で有意差を認めなかったが、尿中8-OHdG値は健常者と比較しポリオ罹患者で有意に高値であり、ポリオ罹患者ではDNAの酸化障害が有意に増加していることが確認できた。また、尿中8-isoprostane値は、PPS群で健常者やnon-PPS群と比較し有意に高値であった。以上の結果よりPPS発症に酸化ストレスが関与していると考えられ、尿中8-isoprostaneはポリオ罹患者においてPPS発症の生物学的マーカーとなりうることが示唆された。
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