研究課題/領域番号 |
23700661
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
門根 秀樹 筑波大学, サイバニクス研究コア, 助教 (90599820)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 福祉ロボット / 歩行支援 / リハビリテーション / 頭部動作 / 視線 / 電動車椅子 / 国際情報交流 / フランス |
研究概要 |
脳梗塞による運動機能障害のリハビリテーション支援機器の開発において、歩き出しに関 わる脳部位 (歩行誘発野) の性質は、これまで十分に考慮されてこなかった。それらの部位は、脊髄へのパターン開始指令を出すだけてはなく、歩行時の視線や頭部・体幹の姿勢も制御している。本研究では、視線、頭部、体幹の動作と全身移動の関係性に特化したリハビリテーションを提案する。それらの関係性の制御モデルをヒト計測データに基づいて構築し、電動車椅子に実装し、機能障害患者における効果を検証する。この目的の下、本年度に以下の研究成果を得た。1.これまでの研究で、ヒト歩行の計測データから、体の各部位の関係性として水平面内の 回転に注目すると、平均して視線が約600ミリ秒、頭部が約300ミリ秒、歩行方向および他の体部位よりも早く回転しており、視線や頭部が歩行方向や体部位の動きを予測しているという結果が得られていた。本年度はその解析をさらに進め、歩行軌道の曲率に応じた予測時間を求めた。同時に、体の各部位(視線、頭部、体幹、足部)間の時間差を求め、視線から始まりトップダウンで回転方向が伝播することを確認した。ただし足部に関しては左右、遊脚期/立脚期によって異なる挙動となるが平均的には、例外的に体幹よりも早い時点で回転する。2.市販の電動車椅子のコントローラを変更して、モーションキャプチャによるリアルタイムの動作データを入力とし、上記で計測された頭部から進行方向への遅れを伴うシステムを構築し、操作性の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画で一年目に行うとしたもののうち、ヒト動作データの解析の精緻化、数理モデルのシミュレーションによる検討、電動車椅子への単純な遅れモデルの実装までは行ったものの、ダイナミクスモデルの実装に基づく電動車椅子の制御とその操作性の評価を行うことができなかった。また、得られた成果の一部を会議にて発表し、また雑誌論文として投稿、査読中となっているが、十分に発表できたとは言えない。以上により、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の計画で達成できなかった電動車椅子へのダイナミクモデルによるコントローラの実装とその操作性の検証を早急に行い、2年目の内容として計画していた脳卒中による動作機能障害も持つ患者さんへの適用、その効果の検証を行う。特に研究費が必要となる部分については下の欄で述べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越額の発生に関しては、所属している研究機関で所有していた電動車椅子を改変して当研究の目的に使用することができたため、当研究費で購入する必要がなかったことが大きい。スイッチによって通常モードと外部入力モードに切り替えられるようにしてあり、もとの電動車椅子としての機能を保っているため、所有している研究機関での研究に影響はない。現在、電動車椅子のコントローラへの入力となる頭部動作の計測にはモーションキャプチャ(MAC3D)または市販の慣性センサ(Xsens)を用いている。実際のフィールドに適用するにはモーションキャプチャは装置および手間が大掛かりなものとなるので、慣性センサで手軽に用いられるものが望ましい。現在使用している慣性センサはドリフトの問題が発生することがあるので、安定した計測のため、より高精度な慣性センサを購入する。視線計測に関して、動作解析の分野で標準的に使用されている計測装置(EyeMarkRecorder9)を用いているが、リアルタイムでのロボットへのフィードバックには、瞳中心検出部の動作が遅く、適していないのが現状である。これを改善するため、新たな計測装置の開発または購入を検討する。また、患者さんへの適用を行う際に、装置の輸送費および患者さんへの謝金が必要になる。
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