末梢神経内へ運動神経細胞を移植し、神経再支配した骨格筋(MISM;Motoneuron Integrated Striated Muscle)を作成した。今まで治療が困難であった広範な末梢神経損傷や中枢神経障害に対し、すでに実用化されている機能的電気刺激(FES)技術と組み合わせることで、全く新しい麻痺筋の機能再建を可能にする。成体ラットの坐骨神経を切離し、両端を結紮した。胎生14日目のラット脊髄神経細胞を、切断した末梢神経内に移植した。坐骨神経を切離し、培地を投与したcontrol群と無処置群を用い、電気生理学的・組織化学的に比較検討を行った。また、MISMの支配神経へ電極を留置し、体外より電気刺激を行い、ビデオによる歩行解析を行った。神経細胞移植12週間後、脛骨神経内で運動神経細胞は生存し、軸索を伸ばすことで筋神経接合部を形成していることを確認した。無処置群の半数以下ではあったが、toluidine blue染色により有髄軸索を確認した。また、電極を体外より刺激することで、足関節の底背屈が可能であった。歩行解析により腓骨神経の刺激で足関節背屈角度が改善することを確認した。脱神経筋を支配する末梢神経への運動神経細胞移植をおこない、FESと組み合わせることで脱神経筋の機能的再神経支配が可能であった。ワーラー変性をおこした末梢神経と脱神経筋を末梢にて再建する本法は、中枢神経系に対する細胞移植と比べ不可逆な変性に陥るまでの”window of opportunity for the treatment”が広く、少数の細胞で麻痺筋の機能回復を実現できるため、ES/iPS細胞を用いた再生医療の臨床応用に近い技術開発と考える。
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