本研究では、リハビリテーションを必要とする患者が、理学療法士の支援がなくても訓練を行えるようにするための、支援機器の開発を目指した。しかしながら最終的には、表面筋電位計測システムの開発と、肘関節駆動に関連する筋肉の筋活動モデルを構築するために実施した、筋活動計測実験の実施にとどまった。 開発した表面筋電位計測システムは、筋電位センサー、インターフェース回路、ARマーカー、カメラ、PCからなる。使用した筋電位センサーはアンプなどを内蔵しており、EMG信号のみならずARV信号も出力できる。筋電位センサーとPC間のインターフェース回路は、ワンチップ型マイコンのmbedで実現した。肘関節の角度計測は、被験者の手首、肘、肩の位置にARマーカーを貼り付け、カメラで撮影されたARマーカーの位置から算出した。計測されたEMG信号、ARV信号、関節角度は、PC上でリアルタイムに処理され、その結果がディスプレイに表示される。 開発した表面筋電位計測システムを用いて、筋活動モデル構築のための筋活動計測実験を行った。具体的には、肘関節駆動に関わる上肢右上腕筋群の筋活動モデル構築に必要なデータを収集するために、筋電位センサーを上腕二頭筋短頭の二カ所と上腕三頭筋外側頭の一カ所に貼り付け、筋活動を計測した。被験者は、平均年齢22歳の健常な成人男性3名で、右上腕を体幹と平行にした状態で負荷(2.5kg、5.0kg、7.5kg)を右手で把持させ、肘関節の角度を固定した場合(60度、90度、120度)と屈曲運動(速い、ゆっくり)をした場合の運動課題をさせた。計測実験の結果は、筋活動は負荷による外力に対して線形では無く、筋の伸びにも依存することを示した。また、筋疲労によって筋活動が活発になることも確認された。今後はこれらの要因を考慮して筋活動モデルを構築する。
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