研究課題/領域番号 |
23700670
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
疋田 真一 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (00347618)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 視線 / 眼球運動 / カメラ |
研究概要 |
本研究の目的は,眼球表面上の特徴点を用いた視線計測法を視線追跡メガネおよび固定カメラを用いた視線計測システムに実装し,眼の左右上下の動き,視線まわりの回転運動および瞬きから直観的な操作性を備える視線インタフェースを実現することである.平成23年度は,固定カメラを用いた視線計測システムを構築し,基本的なデータを収集するため眼球模型(ガラス球)を対象とした視線計測実験を行った.視線推定に用いる特徴点の数と精度の関係を調べるため,ガラス球に特徴点として5点の印をつけた.特徴点は実際の眼球表面上の毛細血管や虹彩の縁を想定し,角膜の大きさを考慮してその外側に位置するようガラス球の左外側に3点,右外側に2点の印をつけた.そして,3次元眼球運動を再現するために,2軸ゴニオステージと水平回転ステージを用いて各回転軸とガラス球の中心が一致するように光学系を構築した.計測範囲については,水平角度±30deg,垂直角度±15degの範囲で5deg刻みにガラス球を回転させ,各撮影画像中の特徴点位置から視線角度を推定した.また,回旋角度については水平,垂直角度0degの状態で±10degの範囲で5deg刻みにガラス球を回転させ,回旋角度を推定した. 3点の特徴点から回転角を推定した結果,水平角度平均誤差は0.34deg,垂直角度平均誤差は0.29deg,回旋角度推定では平均誤差が0.08degと良好な結果が得られた.また,特徴点数が増加(3→5点)しても推定精度の向上は見られず,角膜の左右両方の領域から3点の特徴点が得られればよいことがわかった.ヒトを対象とした視線計測実験を行う場合,実際の眼球形状には個人差があるため,模型眼と比較して推定精度の低下が予想される.今後は,ヒトを対象とした実験を行い,今回の実験結果を評価基準として眼球形状の個人差を補正する方法を検討していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の研究計画における実施項目と達成状況は次のとおり.(1)眼球表面上の特徴点を用いた視線計測法の位置精度について,(1)-1 1台のカメラを用いて画像を取得するための実験システムの構築・・・達成,(1)-2 撮影画像から特徴点を抽出するための画像処理アルゴリズム・・・一部達成,(1)-2-a ガラス球上の特徴点抽出・・・達成,(1)-2-b 実際の眼球上の特徴点抽出・・・未達,項目(1)-2-b については毛細血管の分岐点や虹彩の縁から安定した特徴点抽出を可能にする画像処理法を確立するために,異なる視線方向の眼球画像から抽出した特徴点を対応付ける方法について検討中.(1)-3 特徴点を用いた視線・回旋角推定・・・達成(2)眼球表面上における特徴点の設定および選択方法について,ガラス球の実験データに基づき,特徴点の数と精度の関係および視線推定に適した特徴点の位置関係について検討,考察を行った.今後,ヒトの視線計測実験データについても同様の観点から検討を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに固定カメラを用いた視線計測システムを構築し,眼球模型(ガラス球)を対象とした視線計測実験を行った.これによりヒトを対象とした実験を行う際の評価基準となる基礎的なデータを得ることができた. 平成24年度以降の課題としては,固定カメラに対して頭部が静止している状況下でのヒトを対象とした視線計測実験とその評価,頭部が動く状況下での視線計測技術の確立と視線計測実験による評価,そして自由に歩きまわる環境下での使用を想定したウェアラブル型視線追跡メガネの試作が挙げられる.また,実験データに基づき必要に応じて視線計算アルゴリズムの改善に取り組む.寝たきりのユーザを想定した固定カメラ方式と日常生活空間内での使用を想定したメガネ方式による視線計測システムが完成した後には,視線の左右上下の動き(位置情報),瞬き(トリガ情報),首を傾げる動作(眼球回旋運動の計測に基づく頭の傾き情報)を組み合わせてPCのマウスのような入力操作が可能なインタフェース(視線マウス)を開発する.この視線マウスをベースに,様々な情報家電やソフトウェアを直観的に操作するためのアクション(入力方法)について検討していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本計画の初年度(平成23年度)に実験システムを構築するにあたり,予備実験用として既に稼働していたシステムの構成パーツ(PC,ディスプレイ,カメラ,レンズ,光学部品)を流用した.したがって,平成23年度の物品費については当初予定した金額に対して支出を大幅に抑えることができた.一方,実験の準備段階においてカメラの内部パラメータを事前に調べておく必要があるが,小型/超小型カメラを用いる場合には従来のカメラキャリブレーションの手順だとパラメータの推定精度がよくないことがわかった.したがって,平成24年度の研究費には,平成23年度分の余剰金を活用して当初予定した予算計画に加えてカメラキャリブレーションシステムを構築するための予算を新たに計上する予定である.
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