研究課題/領域番号 |
23700670
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
疋田 真一 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (00347618)
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キーワード | 視線 / 眼球運動 / カメラ |
研究概要 |
本研究の目的は,1台のカメラで眼を撮影することにより眼球運動およびまぶたの動きを検出し,これらの視線情報を組み合わせることで直観的な操作性を備える視線インタフェースを開発することである.平成24年度は,眼球特徴点として,近赤外光による角膜反射像,瞳孔中心および虹彩輪郭を用いた視線計測技術の開発に取り組んだ. 最初に角膜反射像を用いた視線計測法について,頭部装着型の視線計測装置を試作しヒトを対象とした精度評価実験を行ったところ,水平方向±20deg,垂直方向±10degの範囲における水平・垂直方向の平均誤差はそれぞれ0.52deg,1.17deg(4名の被験者の平均値)であった. 次に,瞳孔と虹彩輪郭を用いて眼球形状に関するユーザパラメータおよび環境パラメータ不要な視線計測技術を開発した.7名の被験者に対して精度評価実験を行ったところ,水平方向±28deg,垂直方向±15degの範囲における水平・垂直方向の平均誤差はそれぞれ0.78deg,0.74deg(7名の被験者の平均値)であった. 次に,瞳孔と虹彩輪郭を用いた視線計測法に基づき,コンピュータのマウスカーソルを眼の動きで操作し,まばたき又は短時間の注視によりクリック動作を行う視線マウスを開発した.ディスプレイ上のランダムな位置に現れるターゲットに対して視線マウスにより位置決めとクリック動作を行ったところ,位置決めとクリック動作に要するターゲット1つあたりの平均時間は,1.2sec(まばたき),0.9sec(短時間注視)であり,通常の手によるマウス操作の平均時間(0.8sec)と比較しうる良好な結果であった. 今後,この視線マウスをベースに,電子書籍リーダーやインターネットブラウザ等のアプリケーションを快適に操作するための入力方法の検討・開発に取り組む予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度までの研究計画における実施項目と達成状況は次のとおりである. ①眼球表面上の特徴点を用いた視線計測法の位置精度について・・・達成:眼球表面上の特徴点として,近赤外光による角膜反射像,瞳孔中心および虹彩輪郭を用いた視線計測技術を開発し,その有効性を確認した. ②眼球表面上における特徴点の設定および選択方法について・・・達成:まぶたによる特徴点の隠蔽問題を回避するため,抽出した虹彩輪郭の一部に楕円を当てはめ,その楕円の中心および楕円と楕円の水平軸との交点を特徴点として利用した. ③頭部運動に対する頑健性の評価について・・・一部達成:ユーザの顔の特徴点として眼球画像より目頭の位置を抽出したが,目頭位置は,カメラに対する顔の動きだけでなく,上下方向に眼球運動が生じる際にも運動することがわかった.対策として,顔の動きに連動する別の特徴点を検討中である. ④視線追跡メガネの試作と利便性の評価・・・達成:頭部装着型の視線計測装置を試作し,開発した視線計測法の精度評価実験に利用した. ⑤視線マウスの開発と操作性の評価について(平成25年度の計画を前倒しで実施)・・・達成:コンピュータのマウスカーソルを眼の動きで操作し,まばたき又は短時間の注視によりクリック動作を行う視線マウスを開発し,カーソルの位置決めとクリック動作に要する時間から操作性を評価した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに固定カメラおよび頭部装着型のカメラを用いた視線計測システムを開発し,ヒトを対象とした視線計測実験によりシステムの有効性を確認した.さらに,平成24年度中に平成25年度実施予定の視線マウスの開発に取り組み,操作性の評価を行った.今年度は,残された課題としてカメラと頭部の相対的な位置が変化する環境下での顔の特徴点検出とそれを用いた視線計測法の開発,およびパソコン上のアプリケーションを快適に操作するための視線入力方法の検討とシステムへの実装に取り組む.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,従来システムの構成部品を再利用することにより物品費の支出削減に努めたこと,および旅費の支出を抑えたことから次年度への繰越金を得ることができた. 平成25年度は,これまでに得た複数の研究成果を公表するため,2件の海外発表(当初計画では1件)の予算を計上する予定である.さらに,より使いやすい視線インタフェースを実現するため,従来システムの改良およびアプリケーション開発にかかる費用に加えて,眼球撮影用カメラ,ユーザの視野を撮影するカメラ,および光学透過型ディスプレイからなるヘッドマウント型視線入力システムの開発予算を平成24年度分の繰越金を利用して新たに計上する予定である.
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