研究課題/領域番号 |
23700677
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中村 尚彦 函館工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30435383)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 知能ロボティックス / 自助器具 |
研究概要 |
本研究では、手指の運動機能に障がいを持つ方を対象とした箸型食事用自助器具の開発を目的とする。本研究で開発する箸型食事用自助器具は、個人個人の残存機能に適応して操作される。これにより健常者と同様の自立した食事を可能とすることを最終目的としている。健常者が摂食する食品は、摘み上げる一口大のもの、掬い上げる麺類のような細長いもの、切り分けて一口大にする大きなものに大別できる。本研究ではこれまで、摘み上げる一口大の食品や掬い上げて摂食する麺類のような細長い食品に対して、有効な箸型食事用自助器具1号機および2号機の開発に成功してきた。本研究期間では、切り分ける必要のある大きな食品にも対応する箸型食事用自助器具の開発を行う。 健常者は食品を一口大の大きさに箸で切り分ける際に、食品から箸先に作用する反力に基づいて箸を操作している。目的とする食品へ対応できる食事用箸型自助器具の実現に向け、次の6項目が必要となる。(1)食品から箸先に作用する反力の実時間測定、(2)反力測定結果に基づく反力測定部の開発、(3)反力提示装置の開発、(4)操作入力部への反力提示装置の組み込み、(5)測定値に基づく反力提示装置の制御、(6)反力計測部、反力提示装置を搭載した3号機の開発。 上記のうち平成23年度は、項目(1)~(3)を実施した。まず(1)について、小型の6軸力覚センサを搭載した箸を作成し、それを用いて健常者の食事中の箸先に作用する食品からの反力を測定した。次に(1)の結果をうけ、箸型自助器具における反力測定部の開発を行った。最後に反力提示装置を開発した。現在、本自助器具は被験者の残存機能を考慮し操作入力として手関節の背屈動作を用いている。そのため今回はDCモータによるトルクを歯車を介して手関節へ伝達することで力覚の提示を行う反力提示装置を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、手指の運動機能に障がいを持つ方の残存機能に適応して操作され、健常者と同様の自立した食事を可能とさせる箸型食事用自助器具の開発を目的としている。本研究期間では、切り分ける必要のある大きな食品にも対応するため、箸先に作用する食品からの反力を操作入力側に提示するシステムを搭載した箸型食事用自助器具の開発を目標としている。 その目標を達成するために必要な6項目のうち、平成23年度は当初の計画通り、(1)食品から箸先に作用する反力の実時間測定、(2)反力測定結果に基づく反力測定部の開発、(3)反力提示装置の開発、までを終えることができていることから、おおむね順調に研究は進展していると言える。 一方で学術講演会における成果発表が当初の予定より少なく、1回のみとなっている。また、学術論文に関しても現段階で初稿の投稿を終えている予定であったため、成果の公表という観点では若干遅れていると言える。ただし、これらの遅れもそれほど苦労せずに取り返せる程度の遅れであると認識している。 以上を総合的に考慮し、全体としてやや遅れていると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本期間における研究目標達成のため、次の6項目が必要となる。(1)食品から箸先に作用する反力の実時間測定、(2)反力測定結果に基づく反力測定部の開発、(3)反力提示装置の開発、(4)操作入力部への反力提示装置の組み込み、(5)測定値に基づく反力提示装置の制御、(6)反力計測部、反力提示装置を搭載した3号機の開発。このうち今年度に(1)~(3)を終えたので、次年度は当初の予定通り(4)~(6)を行う。 (4)について、開発した反力提示装置を手関節へ装着可能となる程度の大きさ、重量で実現するために十分な検討を行う。また、これまでは装着の容易さを重視して開発したため、装着中のフィット感に欠ける自助器具となっていた。しかし、反力提示装置で生成した力を正確に操作者に伝達させるためには、フィット感と装着のしやすさを両立する必要がある。また(5)について、開発する反力提示装置の制御には実時間のAD変換およびDA変換が必要となる。AD変換技術は当研究室でも既に確立された技術であり、特に問題はないと思われる。反力提示装置の制御は、DCモータのトルク制御技術を用いて実現させる。(6)について、これまでの検証結果から、自助器具の重量が重要であることがわかっている。食事を満足に終えるまで扱える自助器具の重量は約550gであり、それを超えてしまうと、その重量による疲労により長時間使用することができない。如何に軽量に実現するかが最大の検討項目である。申請者らが使用しているCADソフトでは部材の材質を指定することで、重量を計算することが可能である。そのため、設計段階で詳細なCADモデルを作製し十分に検討しながら実機の製作に取り掛かることで、時間の節約を試みる。 なお本研究では一連の開発の中で、実際に手指の不自由な本校OBに被験者兼アドバイザとして協力していただく。この本校OBの声を開発する自助器具にフィードバックすることでよりよい自助器具の開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は箸型自助器具操作入力部への反力提示装置の組み込み、測定値に基づく反力提示装置の制御、反力計測部および反力提示装置を搭載した3号機の開発を行う予定である。そのため、これらに必要となるアクチュエータ、センサ類、制御装置、構造材、機械部品、電機部品、電子部品等の購入に物品費を使用する予定である。また、学術講演会参加のために旅費を使用する予定である。特に今年度に2回参加する予定で1回しか学術講演会に参加していないので、今年度は3回学術講演会に参加する予定である。旅行先として静岡県浜松市、北海道札幌市、福岡県福岡市を予定している。さらに次年度は3号機が完成する予定であることから、数多くの検証実験が行われることが予想される。そのため、実際に手指の不自由な本校OBをはじめとする実験協力者に人件費・謝金を支払う予定である。最後に、学術講演会の参加登録費3回分や学術論文の投稿料としてその他の費用を使用する予定である。
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