本研究では、手指の運動機能に障がいを持つ方を対象とした箸型食事用自助器具の開発を目的とする。本研究で開発する箸型食事用自助器具は、個人個人の残存機能に適応して操作される。これにより健常者と同様の自立した食事を可能とすることを最終目的としている。健常者が摂食する食品は、摘み上げる一口大のもの、掬い上げる麺類のような細長いもの、切り分けて一口大にする大きなものに大別できる。本研究ではこれまで、摘み上げる一口大の食品や掬い上げて摂食する麺類のような細長い食品に対して有効な箸型食事用自助器具1号機および2号機の開発に成功してきた。本研究期間では、切り分ける必要のある大きな食品にも対応する箸型食事用自助器具の開発を行う。 健常者は食品を一口大の大きさに箸で切り分ける際に、食品から箸先に作用する反力に基づいて箸を操作している。目的とする食品へ対応できる食事用箸型自助器具の実現に向け、次の6項目が必要となる。①食品から箸先に作用する反力の実時間測定、②反力測定結果に基づく反力測定部の開発、③反力提示装置の開発、④操作入力部への反力提示装置の組み込み、⑤測定値に基づく反力提示装置の制御、⑥反力計測部、反力提示装置を搭載した3号機の開発。 上記のうち、本申請期間では6項目を全て実施した。また、開発した3号機について、健常者による安全確認実験を経た後、手指の不自由な本校OBによる検証実験を福祉用具満足度評価に従い行った。その結果、食品把持反力を操作入力部に提示することで一口大の食品から麺類、切り分けて一口大にする食品に至るまで有効性を確認できた。また、実験に参加した本校OBから自助器具の操作性が格段に上がったとのコメントを頂いた。一方で、食品を摘み上げることには操作性が向上したが、食事という行為全体として考えると、対処すべき問題がいくつか浮上した。今後はこれらの問題を改善していく予定である。
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