本研究では,実態調査と実験的運動介入を行い,身体活動が子どもの睡眠の質にどのような影響を及ぼすかを包括的に検討することを目的とした.実態調査では,男女児童を対象に,10日間の生活習慣調査(身体活動,睡眠の質,他)と睡眠・覚醒リズム測定, Quality of Life(QOL;心身の健康についての主観的な評価)調査 を行い,子どものQOLと睡眠や身体活動を含む生活習慣との関連性を検討することとした.実験的運動介入では,運動習慣のある男子生徒を対象に運動介入(中強度ぺダリング運動)と終夜睡眠ポリグラフ測定を行い,日中の一過性運動がその晩の夜間睡眠にどのような影響を及ぼすかを検討することとした. 最終年度にあたる平成26年度は,主に平成25年度までに得られたデータについて,再解析とより詳細な追加解析を行った.とくに夜間睡眠構造については,最近の国際的な研究・臨床動向を踏まえ,アメリカ睡眠医学会から出された新たな睡眠段階判定基準(アメリカ睡眠医学会)に基づき再判定を行った.この結果,9名の有効な睡眠データ(部分的含む)を得ることができた. 本研究において,男女児童を対象に行った実態調査の分析結果からは,子どもの主観的な健康観であるQOLの高さには,睡眠時間の量だけでなく,主観的な睡眠の質の良さや睡眠-覚醒のリズムが良いことなどが関わっていることが示唆された.また,男子生徒を対象に行った運動介入実験の分析結果からは,就床時刻の約6~7時間前に行う中強度運動による生理学的変化は,僅かであるが夜間睡眠構造に影響をもたらし,翌朝の起床時覚醒を低下させる可能性があると考えられた.
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