本研究では、不登校、軽度発達障害、問題行動などの悩みを抱える思春期の青少年を対象に約20日間の長期に渡る冒険キャンプを実践し、彼らの「内的体験としての身体」に着目してその意味を探ることを目的としている。方法として、長期冒険キャンプにおける「こころ」と「身体」を客観的・数量的に切り分けて捉えるのではなく、その個人の全体を表現する「身体」として心理臨床の視点から検討することが特徴である。 平成26年度は、研究助成期間の最終年度となったため、研究成果のまとめを重点的におこなった。研究1の長期冒険キャンプにおける「身体」の意味の全体像把握については、修正版グラウンド・セオリー・アプローチを用いて、平成25年度までに得られた暫定的なモデルの再分析をおこなった。その結果、キャンプの中で参加者が体験した「冒険プログラムの中で心と身体の関係性が変化する」プロセスとして、「混沌とした心と身体」「心と身体のつながりや限界に気付く」「身体を入口として自分に向き合う」「自分の身体に自信を持つ」といった4段階の過程が示された。またそのプロセスに「心と身体の伴走者としてのスタッフ」「冒険プログラム特有の仲間体験を体験する」「原始的な自然の中でリアルな感情を抱く」など他者や環境との相互作用が影響していることが明らかになった。次に、研究2の個人の心理的背景との関連における「身体」の意味について特徴的な事例を検討した結果、キャンプの体験が個性化(アイデンティティ探求)の過程として意味があることが示唆された。
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