研究課題/領域番号 |
23700695
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
田井 健太郎 長崎国際大学, 人間社会学部, 助教 (00454075)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 近世武芸 / 山鹿流兵法 / 武芸概念 |
研究概要 |
研究活動実績としては、(1)【平成23年6月】長崎県立歴史博物館(長崎市)所蔵の近世兵法資料『兵法大事』、『兵法神文鈔』の資料撮影、蒐集作業、(2)【同年9月】日本武道学会第44回大会(勝浦市)に参加し、本研究課題に関連する近世武芸、近代武道についての研究発表から情報収集および関連分野の研究者との意見交換会、(3)【平成24年2月】長崎大学(長崎市)にて本研究課題から派生する「身体教育」に関するシンポジウムの開催に向けて研究内容とシンポジウムテーマの打ち合わせ、(4)【同年2月】示現流兵法史料館、鹿児島県歴史資料センター(鹿児島市)において、近世武士身分性の形成と武芸の関連について調査、(5)【同年3月】筑波大学にて「身体教育」に関するシンポジウム(日本体育学会大会および日本体育・スポーツ哲学会にて開催予定)打ち合わせを行った。 特に、山鹿流兵法書『武教小学』の資料分析では、山鹿素行の「士」観は、逸脱者を断ずる役人ではなく、理想を具現化するいわば聖人のような存在として示されていることが確認された。他方、命がけで守る「道」や義に裏付けられた「武」を重視する中世来の武士の倫理観の面影が残されていることも伺われ、戦闘者的存在と聖人的存在の両面性がみられる。これらは、古代中国に倣った士大夫観を参考にしつつも、後に書かれる『中朝事実』での母朝の歴史に対する正統性の証明活動が想定させる。また史料から、兵法入門者への指導について士大夫的「士」観と戦闘者的「士」観の二点から整理した。現在、これらの研究成果について論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、武道の文化的淵源を明らかにするために、近世の思想書、兵法書を用いて近世武芸の戦闘技法構造、倫理性の検討、武芸を用いた武士教育の内実について検討することを目的とした。平成23年度は、山鹿流兵法書の中で山鹿素行の後期著作を対象とした資料蒐集、分析、成果発表への準備に取り組んだ。 本年度の達成度としては、予定していた史料調査を実施し、また山鹿流兵法書の史料分析も進んだ。予定していた研究発表が行えなかった点については未達成課題であるが、成果については投稿論文に加え、当初の計画にはなかったシンポジウム開催、書籍発刊の準備を進めており、総じて研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究方法については23年度と同様である。23年度の研究課題2「近世思想家における倫理教育―中江藤樹を中心にー」は継続して行う。加えて24年度の課題は、1.近世武芸の体技性(身体技法性)について2.近世武芸における倫理性の検討-『武教小学』と『山鹿語類』を資料としての二点である。【研究発表予定】・近世の武芸概念成立についての研究発表をIMACSSS(平成24年6月,Genova)にて行う予定である。・「体育哲学を再考する(仮)」のテーマでシンポジウム(平成24年8月,日本体育・スポーツ哲学会大会)を開催予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、近世兵法書、近世思想資料を対象とした資料蒐集、分析に取り組む予定である。これらのテキストでは、変革する武士のエートス(性格、慣習)、社会的位置づけが中心的な問題として取り上げられることが予想される。こうした中で、各地の研究施設(筑波大学付属図書館、熊本大学付属図書館、海上保安大学校付属図書館、平戸市博物館、赤穂市、広島大学付属図書館など)に散見される資料の比較検討のもと、武芸の倫理性に通ずる成果を求めていく。(参考文献の蒐集 図書資料費:150千円,国内調査・研究旅費:70千円,外国研究旅費:250千円,専門的知識の提供:25千円,短期雇用者の任用:10千円,その他:消耗品費35千円) 本研究の成果は順次、学会発表、原著論文の形で公表していく予定である。(国内成果発表旅費:50千円,研究成果投稿料:10千円)
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