本研究は、体育科の評価をめぐる潜在的カリキュラムについて実証的に明らかにすることと同時に、教員のキー・コンピテンシーを高めるための評価システムを開発、モデル実施することで活きた評価の在り方について提言することであった。 最終年度には、多くの学校の授業研究にかかわり、また研究会を通して教員が無理なく評価が行えるシステムについて研究を進めてきた。その際に、明らかになったのは、教員の学齢期に経験した体育授業が指導する際の体育授業の考え方を固定化させ、子どもに伝達してしまっているという潜在的カリキュラムの発見につながった。と同時に、その価値観が評価の観点にもとづいて具体的に評価する際に、教員間で同様の評価ができないようなバイアスになっていることが明らかになっている。また、教員がこれまで経験してきた部活動やスポーツ経験が知らず知らずのうちにスポーツ観を形成してしまっており、子ども達の変容ではなく、結果をラベリングしてしまう傾向があることも指摘されることとなった。 さらに、6年生の教員と児童に1年間の体育授業を通して形成された評価に対する意識調査をすることを通して、教員の評価観が児童の評価に対する意識に影響を与えていることも明らかになった。さらには、教員が理想とするクラス人数の相違が、児童の評価に対する意識にも影響を及ぼしていることが示されることとなった。 以上のことから、昨年度までに開発されたティーチング・デジタル・ポートフォリオの活用が有効になることが示唆されている。ただし、このことは、教員のキー・コンピテンシーに影響を与えることまでは推察されているが、キー・コンピテンシーが如何に高まるのかといった詳細な部分までは証明するに至っていない。上記のような課題は残されたものの、本研究が目的としていた部分まではある程度達成されたと考えられる。
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