研究課題/領域番号 |
23700701
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
山口 裕貴 桜美林大学, 総合科学系, 講師 (50465811)
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キーワード | 身体 / 身体観 / 他者 / 空間 / パトス / ロゴス / 間柄 / セルフ・エフィカシー |
研究概要 |
「体ほぐし」の知的教材開発の一環である「気づきことば」として採用可能な用語を、東洋哲学の思想から抽出した。具体的には、和辻哲郎の倫理学的論考及び三木清の情念論を論拠とし、子どもの心身に宿る行為的源泉の内容概観をとおして、人間発達における身体性の捉え方に関する一視点を提示した。用語として「空間」「間柄」「パトス」「ロゴス」という概念の質的検討を教育学的側面より行った。 また、共同研究として、心理学的検討にも参加した。具体的には、Health Action Process Approach Modelを構成する心理的規定要因尺度の開発というテーマで、大学生の運動行動の促進に関する心理的な規定要因を探索するためのモデルを構成する尺度作成を試みた。特に、Health Action Process Approach Modelの基本となる「セルフ・エフィカシー」「結果予期」「リスク知覚」を測定するための指標作りを目的とした。 さらに、実地調査として、フランス(パリ、ストラスブール)を訪れ、ストラスブール大学および、パリのグランジュ・オ・ベル中学校、ブランジェール小学校、ラヴォワジエ中等学校において、フランスの学校体育の授業見学と、教育目的・内容の検討を行った。また、大学のスポーツ科学を専攻するコース所属の教員3名とのインタビューを行い、教員養成の趣旨と現実について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「体ほぐし」の知的教材開発の一環である「気づきことば」の抽出とともに、心理学的検討にも参加できたことの意義は大きい。哲学用語のみならず、Health Action Process Approach Modelを構成する心理的規定要因尺度の開発として、「セルフ・エフィカシー」「結果予期」「リスク知覚」を測定するための指標を作るなかで、「体ほぐし」の知的教材化のための心理学的示唆が得られ、「健康」という大テーマと「体ほぐし」との意義的連関が心理学的側面から見ることができた。 また、実地調査として、フランス(パリ、ストラスブール)を訪れ、パリのグランジュ・オ・ベル中学校、ブランジェール小学校、ラヴォワジエ中等学校において、フランスの学校体育の授業見学と、教育目的・内容の検討を行い、フランスでの体育観と日本のそれとの相違点に触れられたことも意義深い。「体ほぐし」にある「身体への気づき」という哲学的原点より、フランスでは具体個別的な運動やスポーツにそれぞれの仕方で参加することを志向していた。このことは、ストラスブール大学のスポーツ科学を専攻するコース所属の教員3名とのインタビューからも見て取れ、非常に示唆的であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「体ほぐし」の知的教材開発の一環である「気づきことば」として採用可能な用語を、西洋哲学の思想から抽出していく。具体的対象哲学者は、メルロ=ポンティ、ベルクソン、ドゥルーズなどである。ここでは主として文献調査を行っていく。 それと並行して、東洋の「気」の思想にも一層踏み込んでいく。自身の身体とより深く対峙(対話)するには、どういう視点や手法が考えられるのか、実地視察等も含め、検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
チベット訪問を予定している。中国思想の源流であるチベット仏教における「気」の思想に実際的に見て触れるの調査出張である。 また、文献調査の充実のため、適宜、西洋の哲学書を購入し、精読を進める。 その後、抽出した「気づきことば」が学生・生徒に対し、どのような教育的効果を生み出すのかに関して、アンケート調査、聞き取り調査等を行い、考察していく。
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