研究課題/領域番号 |
23700713
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安田 智洋 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (20549604)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の目的は、加圧トレーニングの利点を生かした筋力改善プログラムについて検討することであった。 【研究3】セラバンドを用いた血流制限下の低強度運動(加圧運動)が筋活動に及ぼす影響を検討した。一般成人男性9名にセラバンド(最大筋力の約20%負荷強度)を用いて肘伸展および肘屈曲運動を加圧あり(BFR)と加圧なし(CON)を実施した。その結果、BFRでは、両種目の筋活動量は運動に伴い有意に増加した(46-69%)。一方、CONでは筋活動量の増加は観察されなかった(12-23%)。セラバンドを用いた加圧運動は運動中の筋活動量を顕著に高めるため、リハビリ患者や低体力の高齢者に対して有用な筋力トレーニングとなる可能性が示唆された。 【研究4】トレーニングマシンを利用した加圧トレーニングが高齢者の筋サイズ、筋力、血管機能に及ぼす影響を検討した。健康な高齢者(平均年齢71歳)をランダムに加圧群9名と対照群10名(トレーニングなし)に分け、加圧群はレッグエクステンション(20%負荷強度)とレッグプレス(30%負荷強度)を週2回、12週間行った。12週間後、大腿四頭筋、内転筋群と大臀筋の筋横断面積は加圧群(4.4-8.0%)では有意に増加したが、対照群では変化がなかった。また、2種目の最大筋力は、加圧群(26-33%)では増加したが、対照群では変化がなかった(1-5%)。一方、血流依存性血管拡張検査(FMD)、脈派伝播速度(CAVI)、足関節上腕血圧比(ABI)は両群とも変化がなかった。トレーニングマシンを利用した加圧トレーニングは血管機能を維持しながら筋サイズと筋力を改善するため、リハビリ患者や低体力の高齢者に対して有用なトレーニングであることが判明した。 以上の研究結果により、加圧トレーニングを用いて高齢者を対象とした安全で効果的な筋力トレーニングプログラムを開発することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年の研究は2編の国際学術雑誌として掲載され、本年度の研究も1編が国際学術雑誌に掲載が決まり、もう1編は現在投稿中である。 また、研究2で実施したトレーニング実験の続き(脱トレーニング実験)をするため、H25年度への研究費繰り越しを依頼したが、こちらの実験も順調に進行しているため、新たな論文として今年度中に投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
筋力トレーニングは筋肥大・筋力増加を引き起こす重要な手段であるが、トレーニングを中止(脱トレーニング)してしまうとそれまでに向上した筋量と筋力は時間とともに徐々に低下し、いずれトレーニング前の状態まで戻ってしまう。したがって、獲得された効果が時間とともにどの程度維持されるかは非常に重要である。 本研究課題で我々は加圧トレーニングを利用した効果的な筋力改善プログラムを開発したが、その効果が脱トレーニングによってどの程度維持されるかについて検討することで、初めて開発したプログラムの重要性を強く主張することができる。 6ヶ月に渡るトレーニング実験を2月上旬に終了し、現在はその後3ヶ月の脱トレーニング実験(5月上旬迄)をしている途中。
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次年度の研究費の使用計画 |
MRI検査代、被験者への謝金、消耗品の購入、SRL受託検査として使う予定。
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