本年度は、イギリスにおけるホッケーのゲームの地域的な普及と用具供給の因果関係を解明することを目的とし、スポーツ用具製造業者アルフレッド・リーダー社の関連用具の供給実態と、近隣地域へのホッケーの普及に及ぼした影響を明らかにする計画であった。ただし、調査を行ったものの十分な史料を得られなかったため、計画を以下のように変更し実施した。 スポーツ用具業者がホッケーの普及過程に果たした役割を精査するためには、用具供給の実態だけではなく、彼らの用具開発の意図にも検討の対象を拡げる必要がある。以上の問題関心から、スポーツ用具業者が1914年以前に取得した特許に着目し、以下の3点から検討を行った。1) ホッケー関連特許の全容、2)用具業者のホッケー関連特許の取得状況、3) 特許取得業者によるホッケー関連用具の商品化。結果、以下の成果を得た。1914年以前のスポーツ用具関連特許におけるホッケー関連特許の総数は45件であった。その数は1890年代後半以降増加し、用具別にはスティック、特にその握りに関する特許が多かった。ホッケー用具の開発と製品化に注力した用具業者は、ボールやスティックといった規格品をホッケー関連用具の市場に大量に投入しただけではなく、使い手の満足度を高める工夫を19世紀末から継続していた。こうしたスポーツ用具業者の意向は、例えば女性用のスティックにおける手の痛みの緩和が女性たちのゲームの参与を容易にすると考えられるように、ホッケーのゲーム普及に少なからず影響を及ぼしていた。 以上の本年度の成果は下記に論文として掲載された。秋元忍、「1914年以前のイギリスにおけるスポーツ用具業者のホッケー関連特許」、『身体行動研究』、第2巻、2013年、pp.17-29。
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