サラブレッドは、走能力に対する優勢な遺伝的要因が意図的に集積された特異な動物であり、その機能の解明は、ヒトを含む哺乳類の運動生理学や健康科学の分野に大きく貢献することが期待される。本研究では、骨格筋(特に、走行運動の主動筋である中殿筋)を競走能力の指標とし、酸化ストレスにさらされた骨格筋から放出される筋肉再生を促進する因子を解明することを目的としている。 これまでの研究で、酸化ストレスにさらされた筋肉細胞の細胞培養上清から分泌しているタンパク質を回収濃縮し、プロテオーム解析を行った結果、108因子が同定され、最も分泌が顕著であった8因子のクローニングを行い、遺伝子配列を確認した。それぞれの遺伝子に検出するためのV5タグと分泌シグナルを付加した後、HEK293T細胞に遺伝子導入した。このシステムでタンパクの分泌を確認しようと試みたが、いずれも細胞内に残存したままで分泌シグナルによる細胞外への放出は観察されなかった。また、タンパク質の分子量も予想外に低下しており、タンパクの分解が進行していることを示唆している。そこで、4因子について、Haloタグを挿入した発現ベクターを骨格筋と心筋の性質を有しているH9c2細胞に遺伝子を導入し、タンパクの発現をTMRリガンドで染色しゲルで分離した後、DNAアレイスキャナーを用いてTMRの赤色蛍光を観察した。タンパク質はそれぞれ想定される分子量のタンパク質を発現していた。そこで大量に培養しHaloタグビーズを用いて精製を行った。それぞれほぼ単一なタンパク質に精製されており、このタンパク質を用いて筋芽細胞の分化を検証する方法に変更した。今後、これらの精製タンパク質をC2C12細胞に添加し細胞の分化増殖能力を検証する。
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