研究課題/領域番号 |
23700723
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
行實 鉄平 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (50449922)
|
キーワード | アダプテッド・スポーツ / 総合型地域スポーツクラブ / 連携・協働 |
研究概要 |
平成25年度は、総合型地域スポーツクラブ(以下、「総合型クラブ」とする)による障害者スポーツの参加機会向上事業(H19-21年度文部科学省委託事業)に取り組んだ福岡県と高知県の2つの事例地域において障害者スポーツ事業を展開する既存組織・個人に対しての活動状況調査及び総合型クラブとの連携に関する意識調査を実施することで、当該事例との連携課題を検討した。また、上記2事例の事業継続課題の検証を行い、「地域におけるアダプテッド・スポーツ環境の構築に向けた総合型クラブの持続可能な障害者スポーツ事業(アダプテッド・スポーツ事業)方策」を展望することを目的とした。 具体的には、「1.各地域で活動する総合型クラブ組織以外の既存組織や個人の障害者スポーツ活動状況を明らかにする」、「2.その既存組織や個人の総合型クラブとの連携意識を明らかにする」、「3.福岡県と高知県の2事例の事業継続課題を検討する」、「4.平成24年度、実施できなかった高知県の総合型クラブ事業参加者に対する満足度調査を実施する」ことで、上記研究目的の達成を目指した。 その結果、1.2.から、組織活動はみられなかったものの、個人が指導者として活動(希望)していたり、当事者(身体障害者)が活動を行っている状況を把握できた。また、このような個人(指導者)は、総合型クラブの存在を認知しておらず、逆に、総合型クラブ側もアプローチができていないことが明らかとなった。次に、3.からは、「指導者の確保」と「道具(用具)の確保」といった2つの事業継続課題が描き出された。特に「指導者の確保」に関しては、福岡では大きな課題となっていた。一方、高知では、スポーツ推進委員への働きかけを進めており、新たな取り組みを捉えることができた。そして、4.からは、総合型クラブ会員の事業満足度と共に、エンパワメント力が高まっていることが明らかにされた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究目標を達成するために、具体的な目標として、「1.各地域で活動する総合型クラブ組織以外の既存組織や個人の障害者スポーツ活動状況を明らかにする」、「2.その既存組織や個人の総合型クラブとの連携意識を明らかにする」、「3.福岡県と高知県の2事例の事業継続課題を検討する」、「4.平成24年度、実施できなかった高知県の総合型クラブ事業参加者に対する満足度調査を実施する」といった4つを設定した。その結果、これらの調査はすべて完了し、その研究成果は、学会等(1.日本体育学会第64回大会、2.第37回日本障害者体育・スポーツ研究会、3.日本体育・スポーツ経営学会第37回大会)で報告し、専門家評価を受けることができた。 しかしながら、本年度に予定(計画)していた、これまでの(H23-H25年度の3年間)研究成果をまとめ、「地域におけるアダプテッド・スポーツ環境の構築に向けた総合型クラブの持続可能な障害者スポーツ事業(アダプテッド・スポーツ事業)方策」を提言する最終報告書は未作成となってしまった。また、高知における周辺環境調査において、多くの福祉領域の関係者との連携が重要視されていることが判明したため、当初計画していたスポーツ関係者へのヒアリング調査だけでなく、福祉領域の関係者へのヒアリング調査を実施することが必要となっている。これについては、来年度の早期に着手(実施)し、研究成果全体の集約を図っていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、H23-H25年度に調査を実施し、明らかにされた、福岡県と高知県の総合型クラブ(2事例)の事業継続課題、および、当該地域周辺で活動する既存組織や個人(指導者)の活動実態を踏まえ、「地域におけるアダプテッド・スポーツ環境の構築に向けた総合型クラブの持続可能な障害者スポーツ事業方策」として研究成果を集約する(最終報告書を作成する)。また、今後の研究推進方策としては、地域における持続可能なアダプテッド・スポーツ環境の構築課題の中でも、特に本研究によって明らかとなった課題の1つである「人的資源(指導者・スタッフ育成)」のソリューションに注視した実践研究にチャレンジしていきたいと考えている。具体的には、総合型クラブが主体となって実施することができる「アダプテッド・スポーツボランティア育成プログラム」を地域の関係組織と連携して開発し、それを実践・評価していくような社会実験研究を検討している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、福岡県と高知県の総合型地域スポーツクラブの各事例の周辺環境調査を実施し、その調査データを基に、各地域のアダプテッド・スポーツ環境の構築課題を提示するとともに最終報告書を作成する予定であったが、高知県の事例分析を進める中で、多くの福祉領域の関係者との連携が重要視されていることが判明したため、当初計画していたスポーツ関係者へのヒアリング調査だけではなく、福祉領域の関係者へのヒアリング調査を含めた調査設計を再設定するために、H25年度の調査を一時見直し(中断し)た為、未使用額が生じた。 上記の理由の為、平成26年度は、早期に、高知県の事例周辺環境調査として、スポーツ領野および福祉領域の関係者とのヒアリング調査を実施するとともに、最終報告書の作成を行うこととし、未使用額はその費用として充てたい。
|