本研究の目的は、競技スポーツにおいて年々その重要性が高まっている情報通信技術を使ったテクニカル活動、特に映像とコンピュータを使った競技サポートやコーチングに関して先進的な事例や技術情報を幅広く調査し整理するとともに、スポーツ活動に重要となる知識と技術とを明らかにし、次世代の選手と指導者に向けた教育プログラムを開発することである。 25年度は、特にクラウドを用いた動画の変換・共有システムを構築するなど、スポーツにおける動画活用手法に関する研究に取り組んだ。大学における授業でこのシステムを用いた学習環境を提供する試みでは、授業中にタブレットにより撮影された動画を、授業後に個人のスマートフォンで再生し学習を行ってもらった。この取り組みからは動画の共有によるスポーツ指導や学習の有効性が示された。ただし、スポーツ活動の中でこれらを円滑に活用するためにはより簡便で使いやすいシステムが要求されることも明らかとなった。 本研究では、研究期間を通じて体育・スポーツにおける情報通信技術の活用手法とその効果について調査するとともに、それを競技者あるいは次世代の指導者に伝えるための教育プログラムの検討を行った。その結果、特に普及が進むスマートフォン・タブレット等のモバイル機器や映像機器、さらにそれらの発展的利用を可能とするクラウドサービスに関する理解と活用能力が重要であり、これらを実践的に学ぶ機会が必要であると考えられた。一方、タブレットを活用した大学体育の授業を分析した結果、個人の運動技能や競技意欲、授業への興味関心のレベルによりタブレット活用の効果が異なることが示唆された。これらの結果から、今後指導者にはより個別的かつ多様な学習への対応が必要となることも予想され、それに対応できる情報活用能力の養成が重要となると考えられる。
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