スキージャンプでは飛距離と飛行姿勢・着地姿勢の美しさを競うが、飛距離は滑走速度と踏み切りでほぼ決まる。滑走速度は滑走姿勢による空気抵抗で決まる。このため初年度終了までに地磁気・加速度センサを選手の腰、太もも、足首に装着し、腰と膝の角度を連続的に測定し踏み切りの良否を判定する技術を開発した。 スキージャンプ選手は高速で着地するため自分の飛距離を10m程度の単位でしか認識できないという問題があった。審判員が飛距離を判定する方法はいくつかあるがいずれも練習には適した方法ではない。ランディングバーンをビデオ撮影し、本来のルールとは異なるが2、3m程度の精度での飛距離を自動的に測定する手法を2年度目に実現した。また、前年度までに問題になっていた、地磁気・加速度センサからのデータ送信がジャンプ台全体をカバーしきれない、頻繁な較正が必要という問題に対しては、2年度目に新たに無線送信距離が長いセンサをを開発することで対処した。 上記の技術は、ジャンプ台に低遅延のネットワークを敷設した上で複数個所からの各コマのタイミングを一致させたビデオ撮影と地磁気・加速度センサの測定データを同期させる必要があり、若干のコマ飛び等の問題があった。 これらの実現により小中学生段階での科学的な指導が可能になるため、最終年度は選手・指導者が自ら運用できるシステムをジャンプ台に設置し、小中学生からトップ級選手への指導に生かせる知見を得たうえで論文投稿する予定であった。遺憾ながら研究代表者が平成24年12月に過労等を原因として重度の欝状態となり休職し、その後復職と休職を繰り返し現在も加療中であり、回復が進んできた現在でも知的作業の実施が可能な時間が1日あたり数時間しかないなど、研究の遂行に困難を伴っている。このため最終年度は研究の実施自体が困難であり、コマ飛び等の問題を解消したのみで終わり、最終的な目標を達成できなかった。
|