研究課題/領域番号 |
23700734
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
石坂 友司 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (10375462)
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キーワード | スポーツ社会学 / 長野オリンピック / 地域社会 / 開発 / スポーツ・メガイベント |
研究概要 |
本研究は、1998年の開催から10年を経過した長野オリンピックの開催地域が、大会によって得られた遺産をどのように活用し、意義づけているのかを評価するとともに、各開催地域がどのような変容を経験しているのかについて、それぞれの取り組みから明らかにすることを目的としている。 長野オリンピックは広域開催で行われ、熱狂的雰囲気で開催を迎えながらも、その熱は冷め、現在では地域の再活性化に向けた取り組みがオリンピックの遺産を活用しながら始められている。4年計画の3年目にあたる2013年度は、各地域に分散するオリンピックの遺産を検証する視角を得るため、メガイベント、スポーツ・メガイベントの先行研究、オリンピック遺産(Legacy)について論じた先行研究から独自の理論枠組みを展開し、それをもとに各地域の事例をまとめた。 その他、カーリングを通じた町作りを掲げる御代田町での現地調査を継続し、関係者への聞き取りを実施するとともに、「御代田カーリングプロジェクト」の一環として行われた「カーリングアカデミー講座」に講師として講演を行った。また、軽井沢町における通年型カーリング場「軽井沢アイスパーク」が創設されたことを受け、現地調査とその動向把握を行うとともに、カーリングによる地域発展を掲げた札幌市「どうぎんカーリングスタジアム」の現地視察、同じく日本で開催された冬季オリンピックである札幌オリンピックの競技施設と後利用の問題について現地調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長野オリンピックでは長野市、白馬村、山ノ内町、軽井沢町、野沢温泉村という5つの地域が開催主体となった。カーリングの開催で協力関係にあった御代田町を加えて、各地域の調査をまとめる段階に入り、その成果を11月に刊行した。ただし、山ノ内町の調査研究を行っていた研究協力者の助力が得られなくなったため、2013年度はこの地域の実質的な調査ができなかった。これまでの研究計画はおおむね達成したと考えられる。 また、この期間に2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定したため、長野オリンピック後の施設利用と地域変容に関する研究の知見が比較検討されるようになった。そのことを受け、研究成果を夏季大会とも比較可能なように整理するとともに、その差異についても検討を行った。特にオリンピックLegacyの位置づけについては長野大会からロンドン大会、そして東京大会への連続性がみられることが判明し、その視角を含み込んだ歴史社会学的研究にテーマを広げて実施した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年にあたる2014年度は、2020年の東京大会の開催決定を受けて比較のための研究成果の発信が求められる。研究成果は共編著というかたちで出版を行ったが、今年度はその過程で明らかになった問題の追加調査を行う予定である。 具体的にはオリンピック招致段階から開催決定に向けた資料分析が十分ではない。長野大会がそもそも何を目指しており、その結果としてどのようなレガシーが作られていったのかについて、その整合性の検証を歴史社会学的な手法から行う。次に、オリンピック遺産の一つとされるボランティア組織について、いくつかの顕著な事例は調査したものの、もう少し広がりを持った展開として把握する必要性を感じている。そのことに対する追加調査を実施する。最後に、軽井沢町をはじめ、オリンピック開催から15年以上が経過し、その遺産を利用しつつも、新たな段階に突入した事例が散見されるようになった。その状況について、関係者への追加調査を実施する。 オリンピックの遺産をとらえる視角について、2012年のロンドン大会をもとに評価枠組みが定められ、議論されはじめている。これら最新の研究動向を把握しながら、東京大会が参照できるようなかたちで研究成果の総まとめを行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は東京オリンピックの開催決定があり、本研究の成果を示す共編著の出版を前倒しで行った。また、研究協力者とともに入る予定であった現地調査が未実施で終わった。そのため予定した現地調査が一部完遂できなかった。 2014年度はこれまで収集した資料データのまとめを行い、アーカイブ化を目指す。現地調査は長野市、御代田町、山中湖村での聞き取り調査、及び文献収集を9月に行う(計15万円)。また、関連領域の文献調査を行うため、洋書を中心とした書籍の購入と調査・研究備品の購入を行う(15万円)。研究成果は日本体育学会をはじめとする学会、各種研究会で報告を行う(14万円)。最後に、本研究の成果を報告書としてまとめる(30万円)。
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