研究課題/領域番号 |
23700736
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研究機関 | 東洋学園大学 |
研究代表者 |
光川 眞壽 東洋学園大学, 人文学部, 講師 (60583408)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 筋腱動態 / 筋疲労 / 協働筋 |
研究概要 |
身体運動や筋力発揮によって骨格筋の力発揮能力が減衰することを筋疲労という。身体運動は複数の筋(協働筋)が張力を発揮することによって発現する。それゆえ、人間の筋疲労の機序を解明するためには、協働筋毎に筋疲労を定量する必要がある。1990年代より、Bモード超音波法によって観察される筋線維および腱組織の長さ変化(筋腱動態)は筋の発揮する張力と関連した動態を示すことが確認されている。そこで、本研究では、筋疲労時の協働筋の筋腱動態を検討することによって、協働筋各筋の張力変化を定量し、筋疲労に対する協働筋の機能的役割について明らかにすることを目的とした。 23年度はごく低強度の筋力発揮によって生じる筋疲労時の筋腱動態を検討した。対象部位は足関節底屈筋である下腿三頭筋とした。被験者は最大筋力の5%レベルを1時間持続する課題を実施した。その際、腓腹筋内側頭(MG)およびヒラメ筋(SOL)の筋腱動態および筋電図を観察した。その結果、MGの筋束が短縮しSOLの筋束が弛緩する区間とSOLの筋束が短縮しMGの筋束が弛緩する区間がランダムに発現することが明らかとなった。これは、筋電図で観察されていた活動交代といわれる現象と一致するものであった。つまり、できるだけ協働筋各筋の疲労を少なくして一定の筋力発揮を維持するために、協働筋で交互に力を発揮する仕組みが働いているといえる。これまでは、筋電図の活動でしか確認することができなかったが、今回初めて力を発揮している筋線維の動態を観察し、筋疲労を最小限にするために協働筋間で力の調節が行われていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度の実験は2つを予定していたが、1つの実験しか実施できなかった。この点については、24年度に持越して実施する予定である。23年度は、ごく低強度の力発揮による筋疲労に対する協働筋の筋腱動態を定量し、筋腱動態から協働筋の力の調節機構の一端を明らかにしたことは重要な知見であったと感じている。しかしながら、この成果を学術雑誌へ投稿することができていないため、できるだけ早急に論文として発表したい。
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今後の研究の推進方策 |
低強度および中強度での筋疲労に対する協働筋の機能的役割についての実験を終えていないため、これらの実験を終了させる。具体的な実験内容については次のとおりである。 被験者は健常な成人男性20名程度とする。はじめに、下腿三頭筋に表面筋電図用の電極を貼付し、各筋の筋腱が撮像できる位置に超音波プローブを貼付する。次に、筋力計を用いて、被験者の足関節底屈動作の等尺性随意最大筋力を測定する。その後、5秒間かけてランプ状に安静時から最大努力まで力を発揮し(ランプ施行)、力と筋腱動態の関係を記録する。作業課題として、最大筋力の40%をできる限り維持する作業課題を行う。作業課題中の表面筋電図および筋腱動態を記録する。課題終了後、ランプ施行を実施した後、最大筋力を測定する。2週間後、60%課題を同様の手順で実施する。 得られたデータは、作業課題を実施できた時間を100%とし、20%ごとに区分けし、各区間の筋電図および筋腱動態を分析対象とする。表面筋電図は全波整流した後、振幅の平均値を各筋ごとに算出する。筋腱動態は、抽出した画像を画像解析ソフトを用いて、筋束長および腱伸長を計測する。各筋の筋電図および筋腱動態の経時変化をグラフ化し、ランプ施行で得られた力と筋腱動態の関係から、筋疲労時の協働筋各筋の筋張力を推定する。 以上の実験結果は、国内学会にて発表し、学術雑誌への論文作成・投稿を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に参加する約20名の被験者への謝礼として約12万円(1回3000円:時給1000円×2回×20名)、実験を補助してもらう検者への謝礼として、約18万円(1回9000円:時給1500円×10日×2名)を使用する予定である。国内学会への発表のため、大会参加費や学会費および旅費として約10万円を使用する。その他に、筋電図用電極、超音波装置用ジェル、電極やプローブ固定用のサージカルテープ・アンダーラップなどの消耗品代として、約6万円使用する予定である。最後に、通信費、関連分野の論文・書籍への代金として約4万円を使用する予定である。
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