研究課題/領域番号 |
23700743
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研究機関 | 日本女子体育大学 |
研究代表者 |
森山 進一郎 日本女子体育大学, 体育学部, 講師 (60386307)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 腹腔内圧 / クロール泳 / ストローク指標 |
研究概要 |
本研究の目的は,初級者から上級者までのクロール泳中の腹腔内圧や体幹部の筋電図の測定を行うことで,クロール泳時の体幹部の活動を明らかにし,体力的指標と合わせて検討することで,一般水泳愛好家に対するクロール泳技術の向上を目指した水泳指導法の確立につながる知見を得ることである.平成23年度においては,泳技術の熟達した上級者を対象としてクロール泳時の腹腔内圧を測定し,ストローク指標と関連づけて分析を行った.これにより,ある程度初級者にとって模範および到達点となるクロール泳における腹腔内圧の変動様相を明らかにすることができた.なお,実験は,データの再現性の確保および実験場の都合より,流水プールにて行った.また,当初予定していた筋電図並びに動作分析については,実験場の問題(ケーブルの絡まり,プールの水質)から平成23年度には実施することができなかったが,最もメインとなる腹腔内圧は順調に測定することができた.上述した実験より得られた主な知見は,「上級者のクロール泳における腹腔内圧は,泳速度の上昇,およびそれに伴うストローク頻度の増加と共に増大することが明らかとなった」ことである.ストローク頻度を高める際には,ストローク動作ならびにキック動作といった四肢で発揮する力が大きくなる.腹腔内圧の上昇に関連する腹部深層筋群は,四肢で発揮する力の大きさの影響を受けることがこれまでの研究報告より明らかになっていることから,四肢で発揮するより大きな力が負荷として体幹部にかかった結果,腹腔内圧が上昇したと考えられる.クロール泳時の腹腔内圧を分析した研究は前例がなかったが,本研究により,選手レベルの泳力を有する上級者のクロール泳時の腹腔内圧の変化を明らかにすることができた.以上の成果は,日本体力医学会および日本トレーニング科学会にて学会発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,これまで前例のない水泳中の腹腔内圧を測定に取り組んだ.有線の器材を用い,電気を使う関係器材にとっては悪条件となる水中環境での測定であったため,実験場の設定にかなりの時間を要することとなったことは,実験が計画通りに進みきらなかった要因の一つである.二つ目の要因は,測定法にある.本研究では,腹腔内圧は,直腸圧を採用している.(値の妥当性に関しては,先行研究により明らかにされているため,データの信頼性には問題ない)測定時には,被検者は自らが肛門よりセンサーを20cmほど挿入する.そのため,一人の被検者に要する時間を推測することが非常に困難であった.具体的には,センサー挿入に際し,被検者によって最短で5分程度,最長では2時間を要した.以上2つの要因から,実験の進行が思うように進まず,やや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度末には,流水プールではなく静水プールにおける実験実施のための準備が整った.そのため,平成24年度に入り,中級者から上級者までのデータ測定の準備を開始し,順調に進んでいる.腹腔内圧以外の測定項目については,昨年度の実験進行状況に示したとおり,腹腔内圧を測定するだけでかなりの時間を要するために,可能な範囲で取り組む予定である.また,泳技術の高い被検者は水中で自由に動くことができるが,泳技術に乏しい被検者はその限りではない.今回用いている腹腔内圧測定用センサーとプールサイドに設置したトランスデューサーとの距離は約1.5m程度である.今年度は泳技術の低い被検者の測定に取り組むが,器材を破損させないよう最大限の注意を払って測定を進める予定である.具体的には,水中に測定検者を配置し,試技前後における被検者の姿勢保持を補助することで,万全を期す.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,中級から初級レベルの被検者に対する実験を主に行う予定である.そのため,研究費の主な使途としては,実験に要する被検者および測定検者への謝金,実験実施に必要な消耗品類が上げられる.また,学会発表や論文執筆を行う上で,資料収集,書籍,出張が発生することが予想されるため,それらの費用として使用するつもりである.
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