最終年度前年度までに,カーブキックのインパクトにおけるボール挙動のシミュレーションを行なうための有限要素モデルを構築し,有限要素解析結果を,高速度カメラを用いた実験結果と比較することによって,有限要素モデルの妥当性を確認できる段階まで研究を推進することができた. 最終年度では,まず有限要素モデルを修正し,有限要素モデルの妥当性を検討した.インパクト中における足部およびボールの軌跡は,有限要素解析結果が実験結果とよく一致していた.インパクト直後におけるボール発射角,ボール速度およびボール回転のいずれも,有限要素解析結果が実験結果と概ね一致する傾向となった.以上より,有限要素モデルは妥当であると考え,この有限要素モデルを用い,カーブキックにおけるボール挙動に影響を及ぼす要因について検討するために,インパクトにおけるボール挙動のシミュレーションを行なった. その結果,ボール速度は,インパクト直前の足部速度に大きく影響を及ぼされるが,シューズアッパー部のヤング率と摩擦係数にはほとんど影響を及ぼされないことが示された.ボール回転は,インパクト直前の足部速度と摩擦係数に影響を及ぼされるが,その影響は大きくないことが示唆された. 本研究では,シューズに関するパラメータのうち,まずアッパー部のヤング率と摩擦係数について,インパクト直後のボール発射角,ボール速度およびボール回転に及ぼす影響を調べたが,本研究で構築した有限要素モデルを用いて,その他の材料特性についてもボール挙動に及ぼす影響を調べることが可能である.また,インパクトのパターンを変化させたカーブキックおよび無回転キックのインパクトにおけるボール挙動のシミュレーションに応用することで,インパクトのパターンとボール挙動の関係を明らかにすることも可能であると考えられる.これらの結果は,競技力向上や製品開発のために活用できるものだろう.
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