研究概要 |
本研究の目的は,我が国のやり投の競技力向上を目指し,初心者から世界トップレベルに至るまでの一貫した指導体制を構築するために,科学的根拠に基づいた「やり投の投てき動作を指導するためのガイドライン」を作成することであった.そのために,H23年度 はバイオメカニクスの観点からやり投の投てき動作(以下,やり投動作)の評価基準を定め,H24年度はやり投動作の評価基準を基にした「やり投の投てき動作を指導するためのガイドライン」を作成することを課題とした. H23年度においては,初心者レベルから世界トップレベルまでの男子やり投競技者91名を対象にして,主に投局面前の準備局面に焦点をあてて,やり投動作を3次元DLT法を用いて分析した.その結果,やりの飛距離を決定する動作要因には,助走速度,身体重心とグリップとの水平距離,上肢の捻り角度,腰の角変位,体幹角度および左右の膝角度の7項目が妥当であることが明らかとなった.また,それぞれの項目の平均値,標準偏差および標準化回帰係数を考慮した評価基準を作成し,1名の競技者の縦断的なパフォーマンスおよび動作の変化を評価した結果,その縦断的な変化を適切にとらえることができたことから,本研究で作成した評価基準が妥当であることが明らかになった.なお,これらの内容をまとめた論文は,日本バイオメカニクス学会の機関誌である「バイオメカニクス研究」に原著論文として受理された. H24年度においては,上述した原著論文の内容を,やり投の選手およびコーチに理解しやすいようにまとめ直した「科学的根拠に基づいたやり投の技術指導のためのガイドライン」の小冊子を作成し,全国のやり投のコーチおよび選手らに配布した. 今後は,このガイドラインを利用して,やり投の技術に関する一貫指導体制を構築するための講習会を展開していく予定である.
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