平成25年度は平成24年度に行った異なる種類の体幹トレーニングが片脚着地動作中の下肢の運動学的・動力学的変数に及ぼす影響を検証した実験結果を更に詳細に分析した。健康な女性30名が実験に参加し、姿勢保持系の体幹トレーニングを行う群(CS群)、非バリスティックな伸張-短縮サイクル系の体幹トレーニングを行う群(NB群)、統制群(C群)にそれぞれ10名ずつランダムに分けられた。2組の実験群は異なる体幹トレーニングをそれぞれ8週間行い、その前後で最大体幹筋力測定及び片脚着地動作中のバイオメカニクス的測定を行った。最大体幹筋力測定は3種類の最大体幹筋力測定装置を用いて行われ、体幹の最大筋力及び表面筋電図測定を行った。 検証の結果、実験群においては、CS群においてのみ有意に最大体幹筋力の向上や体幹部の共収縮状態が向上する効果がみられ、体幹の安定性向上を示す有意なトレーニング効果が認められた。他の2群においては、体幹トレーニング効果を示す有意な変化は見られなかった。しかし、全ての群において片脚着地時における運動学的・動力学的変数を検証したところ、非接触性前十字靭帯(ACL)損傷メカニズムに関わる変数に有意な変化は認められなかった。 本研究の結果から、ただ単に体幹トレーニングを行うのみでは非接触性ACL損傷予防の効果は期待できないと考えられる。しかし、前年度の実験において、実験中に体幹の安定性やアラインメントを矯正する介入を行い着地動作などを行わせたところ、矢状面における着地動作中の股関節仕事量の向上や膝関節仕事量の減少などが認められたことから、体幹トレーニングと併せて実際の動作中の姿勢向上などの指導を行えば、より効率的にACL損傷予防につながる効果が見られる可能性がある。しかし、これに関しては今後の課題である。 本研究における結果の一部は平成26年度以降に開催される学会において発表される予定である。
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