研究概要 |
当該研究の推進に必要な実験装置と実験環境の整備を図った.その後に,心的動揺が脊髄反射運動制御機構に及ぼす影響を調べるための2つの実験を実施した. 実験1では,快‐不快感情が脊髄反射運動制御に及ぼす影響を検討した.快‐不快感情を誘発するための写真刺激としてInternational Affective Picture System(IAPS)を納入し,実験参加者は座位姿勢のなかでIAPSを呈示された.その際に右脛骨神経を電気刺激し,右ヒラメ筋のからHoffmann反射(H反射)を記録した.相反抑制などの関与も検討するために,右前脛骨筋と右ヒラメ筋のEMGも同時に記録した.独立変数には右腓腹部の筋活動(安静,最大随意収縮)と写真刺激(快写真,不快写真,中性写真)の2つを設け,予備実験の後に9名を対象とした本実験を実施した.実験の結果,最大随意収縮条件に限定的に,快感情写真条件における有意なH反射振幅の増大が確認された.運動課題遂行中における快感情の誘発が脊髄反射運動制御に対して正の効果を産み出すことを示唆した. 実験2では,運動課題のパフォーマンスに対する心理的プレッシャーが脊髄反射運動制御に及ぼす影響を検討した.バランスボード上での右片脚立ちを実施させ,その課題遂行中に実験1と同様に右ヒラメ筋のH反射,右前脛骨筋と右ヒラメ筋のEMGを記録した.プレッシャーには,課題成功に対する報酬1,000円および課題失敗に対する罰1,000円(偽教示)を用いた.予備実験の後に7名を対象とした本実験を実施したが,プレッシャー条件では非プレッシャー条件に比べてH反射振幅の有意な縮小が確認された.プレッシャー下において運動課題を遂行する際に,脊髄レベルの低次な運動制御機能は抑制され,大脳皮質を中心とした高次な運動制御に依存することを示唆した.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度余剰直接経費55,676円と平成24年度直接経費500,000円を合わせた555,676円を以下のように使用する計画を立てている.(1)消耗品費として・・・表面電極20,000円,実験用椅子50,000円,実験用机80,000円. (2)国内旅費として・・・日本運動学習研究会(大阪)40,000円. (3)外国旅費として・・・北米スポーツ心理学会(アメリカ・ハワイ)250,000円. (4)謝金として・・・実験参加の謝礼50,000円,実験補助30,000円. (5)その他・・・研究報告書作成費,論文収集費,印刷費等35,676円.
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