本研究はブラジル武芸カポエイラのゲームに特有の「駆け引きのプロセスを楽しむ」ことを実際の体験を通じて理解を深め、他文化理解の一助となる授業モデルを提示することを最終の目的としている。そのために、今回の基礎研究ではカポエイラの教育的意義と習熟段階別の指導法について明らかにすることが目的である。 2ヵ年計画の最終年となる本年度は、現在のブラジルの学校体育におけるカポエイラの取り扱いについて文献調査に基づき明らかにした。 2003年に公布された法令10639号で、公私立学校の基礎教育段階(0~17歳)においてアフロ・ブラジル文化と歴史ならびにアフリカ文化と歴史の教育が義務化された。そして2003年以降は多文化主義国家としての国民意識を形成するために、多くの専門家達によってカポエイラの教育内容が多面的に検討され、学校体育教材として他教科と融合させたカリキュラム開発の必要があることが指摘された。また、現在のブラジルの学校体育におけるカポエイラの教育はアフロ・ブラジル文化の象徴的身体文化の体験を通じて、子どもたちの差別や偏見のない意識を形成するという教育的意義が認められていることが明らかになった。 さらに、ブラジルのリオデジャネイロにおいて、カポエイラグループA(ヘジオナウから派生した現代的スタイルのひとつ)の体系化された習熟段階別の指導法について現地調査し、指導法の理解と身体技法の習得を行った。カポエイラの基本動作は目的によって分類され、初級段階において重要となる動きの展開とそれに関連する基本動作が見出された。 今回の基礎研究において得られた結果を元に、他文化理解のために、カポエイラを通じて文化的な動きや考えを体験することで理解を深めると同時に、身体文化としての歴史や社会的位置づけの理解も図るような授業モデルを構築することを今後の課題としたい。
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