平成25年度は、前年度までに実施した研究成果を国際学会(European College of Sports Science:ECSS)にて発表した。さらに、新たな研究を実施し、その成果を別の学会(International Society of Biomechanics:ISB)にて発表した。 ECSSにて発表した研究成果は、平成24年度に実施した二つの実験(実験1:徒手抵抗トレーニングにおける動作特性の検証、実験2:同生理特性の検証)の結果である。徒手抵抗トレーニングは、特別な器具を用いずに行える、器具で負荷を与えにくい筋にも適用可能であるなどの利点があるとされながら、その特性について科学的に検討した研究例は少なかった。そこで、実験1では徒手抵抗トレーニング中の動作特性として筋力発揮動態(ゴニオメータおよび圧力センサを用いて関節トルクを算出)および筋活動動態(筋電図)を、実験2では同生理特性としてトレーニング実施前後の疲労マーカー、筋損傷マーカー、内分泌動態を検証した。実験1および実験2の結果、徒手抵抗トレーニングは力学的負荷、筋活動レベル、筋損傷が通常の高負荷レジスタンスよりも大きく、高いトレーニング効果が得られる可能性が示唆された。 ISBで発表した研究は、レジスタンストレーニングによる筋・腱の各適応が筋腱複合体全体の出力に与える影響に関するコンピュータシミュレーションである。コンピュータ上でHill型の筋腱複合体モデルを構築し、先行研究で報告されている筋および腱組織のトレーナビリティの実測値を用い、モデルのパラメータを変化させて出力に及ぼす影響を計算した。シミュレーションの結果、レジスタンストレーニングによる筋力(筋断面積)および収縮速度の適応は出力に大きなインパクトを与えるのに対し、腱組織の適応が出力に与える影響は小さいことが明らかになった。
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