研究課題/領域番号 |
23700776
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
青井 渉 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (60405272)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 運動 / 骨格筋 / マイオカイン / がん予防 |
研究概要 |
これまでに申請者らは、大腸がん誘発剤 Azoxymethan(AOM)投与マウスに継続的な運動を行わせることによって大腸がんの形成を抑制できること、および一過性の運動によってマウスの骨格筋および血液中にSecreted Protein Acidic and Rich in Cystein(SPARC)が増大することを報告した。これらを背景として、まず最初に、AOM投与マウスに低強度運動を負荷する条件下において、大腸がん形成の抑制とともに骨格筋および血液中にSPARCが増大するか否か検討した。野生型マウスを安静群、AOM投与安静群およびAOM投与運動群の3群にわけ、運動群には低強度トレッドミル走運動を週3回負荷した。6週間飼育を行った後、大腸上皮におけるAberrant crypt foci(ACF)形成を観察したところ、運動によって有意な抑制を認めた。また運動直後において、腓腹筋および血液中のSPARCレベルの上昇がみられた。運動による大腸ACF形成の抑制効果が野生型マウスに認められる一方で、SPARCノックアウト(KO)マウスにおいて抑制効果が認められない(あるいは小さい)場合、SPARCが運動による大腸がん抑制作用に寄与するマイオカインであると考えられる。そこで次に、SPARCKOマウスを用いてAOM誘発大腸がんモデル試験を行った。SPARCKOマウスおよび野生型マウスをそれぞれ安静群、AOM投与安静群およびAOM投与運動群の3群にわけて同様に飼育を行った。6週間飼育後、大腸上皮においてACF の観察を行ったところ、SPARCKOマウスでは、運動による抑制効果がみられなかった。また、安静群において、野生型マウスと比較してSPARCKOマウスは有意にACFが増大した。以上より、SPARCは運動による大腸がん予防効果を仲介する可能性のあるマイオカインであることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画において記載した「マウス大腸がんモデルにおける低強度運動による骨格筋および血液中SPARCの増大の確認」と「SPARC KOマウスにおいて運動による大腸がん予防作用が認められるか否か検証」を計画通りに行い、これらに対する結論を出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
AOM投与による前がん病変形成には細胞アポトーシスの抑制を介した細胞増殖が関与することが知られている。したがって、大腸上皮粘膜におけるアポトーシスおよび細胞増殖の程度について組織化学的評価を行うとともに、アポトーシス関連タンパク質(Caspaseなど)についての発現量および活性レベルを測定して生化学的評価を行う。一方、大腸発がん抑制作用には大腸組織に存在する内因性SPARCの関与も考えられる。そのため、マイオカインである循環中(外因性)SPARCが大腸発がん抑制に貢献することを確認するため、AOM投与マウスに組み換え型SPARCを投与して、大腸上皮ACFの形成を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験において使用する実験動物(KOマウス、野生型マウス)、飼育費用、試薬類(AOM試薬、組み換えSPARC試薬、分析試薬、その他消耗品)費用に使用する計画である。また、成果公表のため、学会(海外および国内)旅費、論文作成費用、別冊費用に使用計画である。PC周辺機器や関連書籍についても必要に応じて購入予定である。
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