研究課題/領域番号 |
23700778
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
小笠原 準悦 杏林大学, 医学部, 助教 (20415110)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 褐色脂肪細胞 / 白色脂肪細胞 / 分化 / 運動トレーニング / PPARγ / PGC-1α / C/EBPβ |
研究概要 |
【目的】寒冷刺激やノルアドレナリン刺激は褐色脂肪細胞の分化を促進させることが示唆されてきたが、最近になり、寒冷刺激やノルアドレナリン刺激に導かれるプロスタグランジンの増加は、白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞への分化を調節することが報告され、褐色脂肪細胞の機能亢進を介した新たな抗肥満治療法の確立が期待されている。持久的運動はさまざまな細胞に生理・生化学的な変化を引き起こすことから、褐色脂肪細胞への分化能も修飾する可能性がある。本研究では、白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞への分化に及ぼす持久的運動の効果について、その分子メカニズムの解明を目指す。 【平成23年度の結果】平成22年度は、褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであるPPARγの運動トレーニングによる変化について、内臓白色脂肪細胞のモデルである精巣上体白色脂肪細胞を用いて検討した。運動トレーニングによって、PPARγのmRNAとタンパク質の発現は有意に増加し、核内のPPARγタンパク質の発現やPPARγとDNAとの結合も有意に増加した。PPARγの活性化は脂肪分解酵素であるATGLの発現を増加させる。そこでPPARγのアゴニストであるロジグリタゾンを添加すると、コントロール群と比べて運動トレーニング群で増加するATGLのmRNAとタンパク質の発現はさらに増幅され、運動トレーニングは白色脂肪細胞のPPARγの機能を著しく亢進させることが明らかとなった。次年度は、プロテオミクス解析などの手法も視野に入れ、運動トレーニングによって変化するPPARγとの共役因子の検索を行い、褐色脂肪細胞化との関係について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PPARγは褐色脂肪細胞や白色脂肪細胞の分化の最終段階に重要であるが、平成23年度の検討から、運動トレーニングによって白色脂肪細胞のPPARγの機能が亢進することが明らかとなった。この結果は、運動トレーニングがPPARγの機能を介した両脂肪細胞の分化機構への修飾能を有することを示唆しており、PPARγとの共役因子の同定によって褐色脂肪細胞化の調節メカニズムの解明へと発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋筋芽細胞もまた褐色脂肪細胞化する報告があるため、この時重要な転写調節因であるPRDM16の発現を検討したが、内臓白色脂肪細胞にはPRDM16が発現していないことが観察された。そのため、白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞化は骨格筋筋芽細胞からのそれとはまったく別の機構によって調節されると考えられる。さらに、内臓白色脂肪細胞よりは皮下白色脂肪細胞に褐色脂肪細胞化が観察される報告もある。今後は、皮下白色脂肪細胞の検討も視野に入れ、運動トレーニングに誘発されるPPARγの機能亢進を含めた転写調節因子群の変化を検討し、変化の認められた分子について細胞株を用いたin vitroの系で再現させることによって、褐色脂肪細胞化のメカニズムを検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
運動トレーニングに誘発されるPPARγの機能亢進を含めた転写調節因子群の変化を検討するために、PPARγとの共役因子の検索手段としてDNAアレイ解析を行う予定であるため、一部を解析費として使用する。その他は主に実験試薬の購入費として用いる予定である。
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