研究課題/領域番号 |
23700781
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
関根 紀子 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 研究員 (10393175)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 筋萎縮 / 横隔膜 / 機械的人工換気 / ラット / アポトーシス |
研究概要 |
四肢骨格筋と同様に,健康で活動的に過ごすために重要な筋である横隔膜は,主に速筋線維で構成される骨格筋である.横隔膜は生命維持のため常に活動している筋であるが,人工呼吸器の装着などによりその活動を軽減すると急激な萎縮を呈す.そのため,医療現場において人工呼吸器の装着期間の決定は難しい課題となっているが,横隔膜の萎縮は主に速筋線維で起こるため,遅筋線維で盛んに行われてきたこれまでの筋萎縮の予防・軽減についての研究成果をそのまま応用することはできない.速筋線維の萎縮モデルを用いた研究は世界的にも少なく,新たな取り組みが必要とされている.本研究は,横隔膜の萎縮および回復メカニズムを解明し効果的な萎縮予防法のための基礎資料を得ることを目的とするものである. 本年度は主として機械的人工換気システムによるラット横隔膜萎縮モデルを用いて横隔膜の萎縮筋を作成し,タンパク質分解経路を中心に分析を進め,横隔膜萎縮メカニズムを明らかにすることについて取り組んだ.麻酔下のラットに対し,気管切開後に人工呼吸器を用いた12時間の人工換気を行った.横隔膜の横断切片を作成し,免疫組織化学法を用いて筋線維の同定を行い,萎縮の程度を評価した.また,ウェスタンブロット法を用いてタンパク質分解経路について分析を行った.その結果,人工換気後の横隔膜の筋断面積は15%程度減少し,その減少はType IId/x線維の萎縮によるものであった.骨格筋の分解経路の一つであるアポトーシス経路に着目し,その指標である活性化カスパーゼ3および7について分析したところ,人工換気後にそれぞれ6~7倍増加していた.また,リソソーム系の指標であるカテプシンLも2倍程度増加した.本研究の結果,横隔膜萎縮に関与する筋タンパク質分解経路の分析項目がある程度絞られ,メカニズムの解明について新たな知見を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初の計画通り機械的人工換気を実施して横隔膜萎縮サンプルを得た.ベンチレータの入手が遅れたため得られたサンプルに対する分析は未だ途中であるが,ほぼ計画通りに進んでいる.また,来年度に渡り実施する予定である温熱負荷を用いた実験群の作成にも着手し,予定の半数のサンプルを得た.
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今後の研究の推進方策 |
申請当初の計画に従い,本年度で得た横隔膜サンプルの分析を引き続き実施する.また,温熱負荷を施す実験を完了し,組織化学的・生化学的な分析を行う.さらに,人工換気からの回復期の観察を行うためのシステム作りに着手する.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物および人工換気・分析に要する消耗品が研究費の主たる使途になる.継続的な温熱負荷を施す群を設けるほか,新たに人工換気からの回復期を観察するための群を設ける.新たな試みを行うため,実験動物は60匹程度を予定している.また,本年度および次年度の研究成果を発表するべく,国内外での学会発表および論文投稿のための費用を計上する.
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