研究課題/領域番号 |
23700781
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
関根 紀子 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 助教 (10393175)
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キーワード | 筋萎縮 / 横隔膜 / 機械的人工換気 / ラット / アポトーシス |
研究概要 |
四肢骨格筋と同様に,健康で活動的に過ごすために重要な筋である横隔膜は,主に速筋線維で構成される骨格筋である.横隔膜は人工呼吸器の装着などによりその活動を軽減すると急激な萎縮を呈す.そのため,医療現場において人工呼吸器の装着期間の決定は難しい課題となっている.これまでの廃用性萎縮に関する研究により,熱ストレス負荷が遅筋線維を主とした下肢骨格筋の筋萎縮に対する抑制効果を持つことが知られている.しかしながら,速筋線維を主とした筋萎縮に対しても同様の効果を示すか否かは不明である.さらに,筋の機能低下に対する熱ストレス負荷の影響についても明らかではない. 本年度は主として一過性の熱ストレス負荷が,機械的人工換気によって引き起こされるラット横隔膜萎縮筋へ及ぼす影響を明らかにすることを目的として研究を進めた.Wistar系雄性ラットをコントロール(CT,n=9),熱ストレス負荷(HS,n=10),人工換気(MV,n=10),熱ストレス負荷+人工換気(HM,n=9)の4群に分け,HSおよびHM群には41°Cで60分の温熱負荷を,MVおよびHM群には12時間の機械的人工換気を行った(HM群は熱ストレス負荷から24時間後に実施).横隔膜摘出後直ちに等尺性筋張力測定(in vitro)を行った後,免疫組織化学法およびウェスタンブロット法を用いて分析を行った. HM群とCT群の筋線維横断面積に差は見られず,本研究で実施した一過性の温熱負荷は,ラット横隔膜筋萎縮に対する形態的な抑制効果を持つことが示された.しかしながら,HM群の等尺性張力はCT群に比べ低下し,その程度は人工換気群と同程度であったことから,機能特性には影響を及ぼさないことが示された.本研究の結果,温熱負荷はカスパーゼ3を介したアポトーシス系に関与して横隔膜萎縮を抑制することが示唆され,横隔膜萎縮の軽減のための新たな知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初の計画通り単回または複数回の温熱負荷を与えたのち機械的人工換気を実施して横隔膜萎縮サンプルを得た.単回温熱負荷に関しては既に学会発表を行い,現在論文執筆中である.また,来年度に渡り実施する予定である改良型横隔膜萎縮モデルの検討にも着手し,現在準備中である.
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今後の研究の推進方策 |
申請当初の計画に従い,本年度で得た横隔膜サンプルの分析を引き続き実施するとともにこれまでの研究成果の発表を積極的に行う.また,着手した人工換気からの回復期の観察を行うためのシステム作りを進め,回復期のデータを得るとともに分析を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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