研究課題/領域番号 |
23700786
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
永野 康治 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (00548282)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 前十字靭帯損傷 / 体幹 / 予防 / メカニズム |
研究概要 |
非接触型前十字靱帯(ACL)損傷場面の特徴として,大きな膝外反の他に,バランスを崩し,体幹が後傾している.方向転換動作における膝関節運動,体幹運動の関係について明らかする必要があり,特に,体幹前傾を増加させることで,ACL損傷リスクの低い動作が可能であると考えられる.そこで本研究ではACL損傷受傷場面を避けるため,切り返し時に体幹前傾を指示し,体幹運動と膝関節運動および膝関節トルクとの関係を検証した.スポーツ選手14名を対象とした.対象者は5mの助走の後,180度ターンを行いスタート位置に戻る方向転換動作を全力で行った.通常試技の後に,意図的に体幹を前傾させる指示を与え再度計測を行った.計測時に反射マーカーを体幹および左下肢に貼付し,計測データより膝関節および,股関節の関節運動および各関節に作用する関節トルクを算出した. 最大膝内転トルクについて性差が認められ,女子選手では体幹前傾指示に伴い最大膝内転トルクが増加する傾向がみられた.女性では前傾指示により,膝屈曲角度最大値,股屈曲角度最大値,股屈曲変化量が有意に増加し,股内旋角度最大値(p<0.05) ,股内外旋変化量は有意に減少した.男性では前傾指示により,股屈曲角度最大値(p<0.01) ,股屈曲変化量,股外転最大値が有意に増加した.女性において体幹前傾指示による股関節伸展モーメントの増加傾向が強く,股関節外旋モーメントも増加傾向であった.また,女性では体幹前傾指示によりACL損傷リスクファクターである膝内転モーメントが増加する傾向を示し,体幹前傾を与えるだけでは,ACL損傷リスクを減少させることができないと示唆された.方向転換動作における体幹運動と膝関節の関係には性差がみられ,ACL損傷予防にむけた方略は性別によって異なることが示唆された.以上の内容の一部は第66会日本体力医学会にて発表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は方向転換動作における膝関節運動,体幹運動の関係について明らかにすることを目的の1つとしていた.研究の結果,膝関節運動と体幹運動の関係は単純な相関関係ではなく,性差が存在し,性別によって異なる関係性があることが明らかになった.このことは女性に前十字靭帯損傷が好発する要因の1つであると考えられ,メカニズムの面においても,予防の面においても女性の体幹コントロールの重要性が証明され,さらに予め設定した仮説を上回る有用な結果が得られたと言える. 一方でもう1つの目的として,方向転換動作中の体幹の加速度変化の性差とACL損傷との関係について明らかにすることを挙げたが,この研究に関しては,加速度データが方向転換動作の評価指標として確立されておらず,その予備実験を行うのみとなってしまった. 上記より,今年度における研究目的はやや遅れていると考えられるが,予備実験は順調に進んでおり,来年度以降,順調に研究が進むと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は方向転換動作における体幹加速度についての研究を推進する.現在その予備実験に取り組んでいるが,加速度データの妥当性,信頼性の確認が取れつつあるため,今後は本実験に取り組み,まずは健常人におけるデータから研究データを積み重ねる予定である.並行して,対象者として予定しているACL再建後の選手のリクルートを進め,データ計測を行う予定である.実験試技としては今年度の試技を踏襲するため問題はないと思われる. また,ACL損傷予防トレーニングによる,方向転換動作における変化の検討がもう1点の研究目的として挙げられるため,その対象者となるチームの選定を進める.選定が順調に進めば,トレーニング介入前の基礎データの計測を進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り使用する予定である.
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