研究課題/領域番号 |
23700786
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
永野 康治 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (00548282)
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キーワード | 前十字靱帯損傷 / 体幹 / 予防 / メカニズム |
研究概要 |
加速度計を用いて体幹コントロール能力の計測を行い,ACL損傷のメカニズムやリスクファクターとなり得る体幹運動挙動を明らかにすることを本年度の研究目的とした.まず,切り返し動作における体幹動作の評価指標として体幹加速度をあげ,その信頼性の検討を行った. 健常成人男子8名を対象とした.対象者は5mの助走の後,180度ターンを行い,スタート位置に戻る切り返し動作を全力で行った.計測時に加速度センサ(ロジカルプロダクト社製)を第1,2胸椎棘突起間上に両面テープにて貼付し,バンテージにて固定した.加速度センサのX軸を体幹の左右方向,Y軸を上下方向,Z軸を前後方向に設定した.動作中の身体の左右方向および前後方向の加速度を200Hzにて計測し,接地後200ms間の加速度の最大値(G),変化量(G),および接地から最大値までの時間(Time to Peak; 以下TTP)(ms)を算出した.それぞれの結果は概ね高い再現性が得られ,切り返し動作における評価として体幹加速度を用いることが可能と考えられた. 次にACL損傷に対するリスクファクターとなり得る体幹加速度の検討を行った.健常サッカー選手男女各8名を対象とし,切り返し動作を全力で行った.その際,上記の研究同様,体幹加速度の計測を行った.また,その際の動作をハイスピードカメラを用い矢状面,および前額面より撮影し,体幹角度,下肢角度を算出した.その結果,接地後200msにおけるY軸(上下)方向加速度の最大値に性差がみられ,女性で有意に大きな加速度であった.また,体幹加速度と接地時肢位との関連を検討した結果,上下方向加速度と大腿角度,体幹側方傾斜角度,膝外反角度との間に相関関係がみられ,切り返し時の体幹加速度は,その際の動作を反映しているものと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は昨年度からの継続研究として,本来であれば研究初年度に遂行予定であった加速度計を用いた体幹コントロール能力の計測を行った.まず,加速度データが方向転換動作における評価指標としての妥当性,信頼性を検討し,概ね良好な結果を得た.その結果をもとに,方向転換動作中の体幹の加速度変化の性差とACL損傷との関係について検討した.しかし,仮説に上げたような前後,側方への加速度に性差は見られず,一方,上下方向加速度の最大値に性差がみられ,女性で有意に大きな加速度であった.また,体幹加速度と接地時肢位との関連を検討した結果,上下方向加速度と大腿角度,体幹側方傾斜角度,膝外反角度との間に相関関係がみられ,ACL損傷における危険因子としてどどういった加速度指標を用いるかについて,再考する必要があると考えられた. 本来の研究計画では,今年度の研究において,ACL損傷の危険因子を特定し,その後,その危険因子に対するトレーニングによる改善効果を検討する予定であった.しかし,上述の通り,危険因子の特定に至らなかったため,さらなる時間を要する可能性が高い.
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今後の研究の推進方策 |
今後,方向転換動作におけるACL損傷危険因子としての体幹加速度評価についての研究を継続して行う.特にACL損傷の受傷時に見られる,体幹の側方傾斜や膝の外反動作と関連の大きい,加速度指標を特定することを目的とする.また,切り返し時の動作および加速度変化には,体幹や下肢筋力が大きく関係することが考えられることから,筋力を中心とした身体機能と切り返し動作との関連も検討する.これらの研究からACL損傷の危険因子およびその関連身体機能が特定できれば,危険因子に対するトレーニング効果を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定より加速度計,および解析ソフトに多く支出し,旅費を少なく使用する予定である.
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