研究課題/領域番号 |
23700791
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研究機関 | 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター |
研究代表者 |
本間 俊行 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, マルチサポート事業, 契約職員 (90392703)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 低酸素 / 超最大運動 / 代謝 / 酸素摂取量 / 有酸素的エネルギー供給 / 無酸素的エネルギー供給 / 血中乳酸 / トレーニング |
研究概要 |
平成23年度は,無酸素的エネルギー供給能力の向上を目的とした低酸素トレーニングの有効性を検証することを目的として,自転車トラック競技短距離選手が実際に行っているトレーニングの運動時における代謝に低酸素曝露が及ぼす影響を調べた. 日本代表を含む男子自転車トラック競技短距離選手11名(年齢22.2±4.5歳)を対象に,被験者ごとに設定した70秒間持続できる最大の仕事率(558±76.9W)での固定負荷自転車運動を常酸素下(20.9%)と低酸素下(14.4%)で行わせた.運動時間は70秒間,ペダリングの回転数は100回/分であった.運動中の酸素摂取量(VO2)をブレス・バイ・ブレス法で測定した.また,運行終了後に血中乳酸濃度を測定した. VO2は,運動開始後20秒までは両条件で同様の変化を示したが,それ以降は運動終了まで低酸素下のほうが常酸素下よりも低値を示した(p<0.05).運動中の総酸素摂取量は低酸素下において常酸素下よりも有意に低かった(常酸素下:2.98±0.25L,低酸素下:2.60±0.26L,p<0.01).運動終了後の血中乳酸濃度の最高値は低酸素下において常酸素下よりも有意に高かった(常酸素下:13.7±1.6mM,低酸素下:15.4±1.4mM,p<0.01). 以上の結果から,短時間・高強度の同一絶対強度の運動時においては,低酸素下のほうが常酸素下よりも有酸素性エネルギー供給量が小さく,無酸素性エネルギー供給量が大きいことが示唆された.運動後の血中乳酸濃度の差や,運動開始後20秒以降でVO2に条件間で差がみられたことから,低酸素下では常酸素下よりも解糖系によるエネルギー供給が大きくなると思われる.以上のことから,短時間・高強度のトレーニングを行う際には,常酸素環境よりも低酸素環境のほうが無酸素性エネルギー供給機構に与える刺激が大きいことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,自転車トラック競技短距離の日本代表選手および大学生競技選手に被験者としての協力を得られたため,当初の予定を若干変更して,競技選手が実際に行っているトレーニングの有効性を検証することに焦点を当てて研究を遂行した. その結果,短距離種目の選手が無酸素的エネルギー供給能力向上を目的として低酸素トレーニングを行うことの有効性が示唆され,次年度以降に行う研究のベースとなる有意義な成果が得られた. 平成23年度は低酸素環境での高強度固定負荷運動時の代謝動態を明らかにでき,無酸素的エネルギー供給能力の向上を目的とした効果的な低酸素トレーニングを行うための基礎資料が得られたため,おおむね順調に研究が進展したと判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度および25年度は,23年度に得られた成果を基盤として,低酸素環境での運動時の骨格筋エネルギー代謝について,運動強度・持続時間の面から,その特徴を明らかにする基礎的検討を行う.また,それまでの成果を基に低酸素トレーニングの有効性が高いと予想される方法でのトレーニング実験を行い,成果を検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は被験者謝金,被験者交通費,論文投稿・掲載料,英文校正,学会参加費,学会参加のための旅費,実験に使用する消耗品に使用する. 平成23年度は,実験の際,被験者謝金および交通費が発生しなかったため,当初の計画よりも研究費の使用額が小さかった.平成24年度は,その剰余額を充当し,当初の計画よりも多くの被験者からデータを取得することで,研究成果の精度を高める予定である.そのため,23年度に使用しなかった分も,24年度分の被験者謝金および交通費に含めて使用する計画である.
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