無酸素的エネルギー供給能力の向上を主な目的とした低酸素トレーニングの効果を検証するためのトレーニング実験を行った。 自転車競技選手を対象として、トレーニングを常酸素環境で行う群(常酸素群、6名)と低酸素環境で行う群(低酸素群、6名)の2群に分けた。測定項目は、65-70秒間持続できる最大強度での固定負荷自転車運動時の酸素摂取量および血中乳酸濃度、漸増負荷自転車運動時の乳酸カーブテストおよび最大酸素摂取量、90秒間全力ペダリング運動時の総仕事量および血中乳酸濃度、リン31-磁気共鳴分光法(31P-MRS)を用いた動的膝伸展運動時の骨格筋エネルギー代謝および運動持続時間であった。トレーニング内容は、70秒間持続できる最大強度での固定負荷自転車運動を、1日あたり70秒間×3セット(セット間の休息は15分間)、週4日、3週間行うものであった。 3週間のトレーニング後、65秒-70秒間持続できる最大強度は両群ともに増加した。同運動時の総酸素摂取量はトレーニング後において常酸素群で増加した(P<0.05)のに対し、低酸素群では変化しなかった。また、同運動時の血中乳酸濃度は、低酸素群においてのみトレーニング後に有意に増加した(P<0.05)。これらのことから、低酸素群では運動時の無酸素的エネルギー供給量が増加したことが示唆された。31P-MRS測定時の動的膝伸展運動の持続時間は低酸素群のみでトレーニング後に有意に延長し(P<0.05)、エネルギー代謝では無酸素性エネルギー供給能が増加したことを示唆する結果が得られた。乳酸カーブテスト、最大酸素摂取量、90秒間全力ペダリング時の総仕事量には3週間のトレーニングによる有意な変化はみられなかった。 本研究の結果から、低酸素環境での短時間・高強度の運動トレーニングは、無酸素的エネルギー供給能力を高める方法として有効であることが示唆された。
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