研究課題
本年度は、大学生を主とする若年層の癌検診に対する意識調査、啓蒙活動の効果、HPVワクチンに対する意識調査を行うとともに、自己採取器具の受け入れやすさ、安心感、使用感に対するアンケート調査を行い、"自己管理型がん検診システムの構築"に向けた基礎的データの収集、検討を行った。始めに若年層を対象とし、HPV、癌検診、ワクチンに関する啓蒙活動を行うと同時に、HPVや子宮癌に対する理解度、検診の重要性、ワクチン接種状況ついてアンケート調査を行い、次に自己採取器具の使用感、受け入れやすさ、安心感についての調査を行った。この調査結果から、若年層での検診受診率、ワクチン接種率は低いこと。また若年層に効果的な啓蒙方法を用いることは、HPVや癌検診に対する理解度を高めるが、行動に結びつくまでは時間がかかることが示唆された。その問題点として、検診台に対する「抵抗感」「羞恥心」であり、ワクチン接種に関しては「費用が高い」等が理由であることが判明した。自己採取器具の使用感については多少の違和感はあるが、受け入れやすい傾向を認めた。婦人科医採取に強い安心感があるものの、若年層が多く占める‘検診未経験者’では自己採取法を受け入れやすい傾向にあった。これら若年層に検診のきっかけを与えるには自己採取法の普及は効果的であり、検診受診率向上に貢献する可能性が考えられた。また国内での自己採取器具の普及、受容性の検討にあたり、日系人の割合が多いハワイにおいて同様の意識調査が行えるか検討した。ハワイ州での検診受診率は、アメリカ本土と同様80%を上回っており、受診のきっかけとして経口ピル処方での婦人科受診であった。婦人科受診の際、細胞診検査を受けるため、若年層での検診受診率も高く保たれていた。我が国では経口ピルの普及率も欧米諸国より低く、経口ピルの普及率も婦人科検診率と関係していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は、若年層における子宮癌検診やHPVに対する理解度、若年層に対する啓蒙効果を評価するとともに、時間的制限、精神的負担を軽減できる自己採取器具への受容性、安心感の検討を行った。結果、若年層に合った啓蒙方法により効果的に理解を導くことが可能であるが、実際の行動と結びつきづらい傾向を認めた。また精神的、時間的負担の少ない自己採取法の受容性は高く、特に検診未経験者で高い。これら結果より、若年層における検診受診へ導くは、HPVなどの基本的な知識の啓蒙とともに、精度の確立した自己採取法という検診普及への効果的な啓蒙活動を行うことが、自己管理型検診システムを構築する重要課題と考えられた。
平成23年度の本研究は、大学生を対象として行ったが、今後はより若年である高校生まで調査対象を広げ、年齢による経時的変化や社会医学的因子(性交開始年齢、経口ピル服用など)の側面を加えた評価を実施したいと考える。より効果的な啓蒙活動方法、性感染症への理解度、癌検診の認知度を調査するとともに、若年者が抱える精神的負担である‘羞恥心’を解決できる「自己採取法」により、それぞれのライフスタイルに合った自立的検診システムに対する多角的、客観的な評価を行う予定である。
(1)意識の乏しい高校生に対する啓蒙活動を行うため、高校生が親しみやすいように編集した動画を活用したDVDなど教材資料作成する。(2)自己採取器具を使用後の使用感、安心感、受け入れやすさに対する調査を行う。(3)自己採取器具の細胞採取精度、診断精度の確立を目的とし、細胞診検査による形態学的またHPV解析による分子生物学的検討を重ねる。(4)多角的データ解析により、自立した自己管理型検診システムの確立と深い関連を持つ因子を抽出する。また、研究費を当初の予定通りに執行した結果端数が生じたが、その端数については平成24年度予算と合わせて使用する予定である。
すべて 2011
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ActaCytologica
巻: 55 ページ: 413-420
巻: 55 ページ: 106-112
臨床検査
巻: 55 ページ: 1449-1452