学生におけるプレゼンティーイズムの概念は'出席しているが、心身の不調によりパフォーマンスが低下した状態'を表す。本研究は保健センターを受診した学生を対象に、認知機能課題を施行し同時に近赤外分光法(near-infrared spectroscopy ; NIRS)を用いて、学生におけるプレゼンティーイズムの概念を客観的に評価・検討することを目的とした。そのため(1)プレゼンティーイズムの学生と健常学生において質問紙検査と認知機能課題(前頭葉賦活課題)を施行し結果を比較、(2)認知機能課題の施行中に前頭前野の脳血流動態の変化をNIRSを用いて比較した。平成23年度の少人数による予備的研究に引き続き、平成24年度は計22名を対象とした。学生版プレゼンティーイズムスケール(PSS)を行い健常群11名、プレゼンティーイズム群11名の2群に分けた。各群に質問紙(ベック抑うつ評価尺度(BDI-II)、人格検査(NEO-FFI))を行い、前頭葉賦活課題(語流暢性課題(WFT)、Trail Making Test)をNIRSと同時に施行した。 本研究の結果(1)年齢とBDI-II得点において、プレゼンティーイズム群は健常群と比較し年齢とBDI-H得点が統計的に有意に高かった。NEO-FFI各項目や前頭葉賦活課題の各得点において統計的有意差は認めなかった。(2)WFT施行前後のNIRSにおいて健常群では前頭前野の有意なOxy-Hb濃度の上昇を認め、プレゼンティーイズム群では認めなかった。このため、プレゼンティーイズムの状態の学生は前頭前野の賦活機能の低下が生じている可能性が示唆された。我々は先行研究でPSSを作成、その妥当性を検討してきた。認知機能検査と生理学的な指標によるプレゼンティーイズムの妥当性の検討報告は、対象者(学生や労働者など)を問わず本研究が初出である。
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