研究課題/領域番号 |
23700808
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
檜皮 貴子 駿河台大学, 現代文化学部, 講師 (50463948)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 高齢者 / 転倒予防 / 体操 / 転倒回避動作 / 運動構造の類縁性 |
研究概要 |
研究初年度となる当該年度の研究成果について、研究計画書と照らし合わせて示す。初年度の目的は、(1)転倒回避動作の運動構造との類縁性を有する転倒予防体操の考案、(2)考案した転倒予防体操の効果測定方法の工夫・開発、であった。(1)転倒回避動作の運動構造との類縁性を有する転倒予防体操の考案は、計画通り考案・作成に至った。その内容は、転倒回避動作の運動構造との類縁性に考慮し、高齢者用に工夫したバランスボードを用いた体操を考案した。具体的な動きは、意図的にバランスボードで足元を傾け、身体重心を揺さぶり、その状況から転倒を回避するための「とっさの一歩」を導き出すものである。考案した体操の重点である「不安定な状況下」での転倒予防体操は、高齢者への安全を配慮するあまり、実施されて来なかった取り組みであることが先行研究の調査から明らかにされている。そのため、安全に配慮した上で意図的に足元を揺らして実施する転倒予防体操の考案は非常に意義深いものと考える。さらに、本研究では、高齢者の意見を取り入れながら、体操の考案を進めた。実施者の意見を反映できたことは、安全かつ主体的な実施に繋げるために重要な点であるため、特筆すべき内容である。(2)考案した転倒予防体操の効果測定方法の工夫・開発では、体操において「とっさの一歩」の導きに重点を置いたため、その動作を評価できるシステムとして工夫した。その際、高齢者の転倒方向で最も多い「前方向」への「とっさの一歩」に焦点を絞った。具体的には、足元の支持基底面を自ら前傾させ、身体重心を安全な範囲で容易に前方へ外すことができるシムテムの開発である。つまり、自らの意志で身体重心を外す状況を作り、その後、転倒を回避するために新たな一歩を誘発するボード(転倒回避動作誘発ボード)である。このシステムは、数値ではなく、動きそのもので評価できるところが非常に重要な点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度となる当該年度の研究成果について、研究計画書と照らし合わせて示す。初年度の目的は、(1)転倒回避動作の運動構造との類縁性を有する転倒予防体操の考案、(2)考案した転倒予防体操の効果測定方法の工夫・開発、の2点であった。(1)においては、当初の計画通りに進んだ。転倒回避動作の運動構造との類縁性を有する転倒予防体操を、バランスボードを積極的に揺らして使用することから、「ぐらぐら(GURAGURA)トントン(TONTON)体操」で、名称を「GUT体操」とした。その体操を、実際に高齢者を対象に指導実践できる状態まで完成させた。そのため、(1)において、おおむね順調に進展していると言える。(2)においては、測定方法を既存の体力測定とは性質を異にする内容にするために吟味を重ね工夫し、当初の計画通りに進んだ。具体的には、筋力やバランス能力を数値で表すのではなく、転倒回避動作そのものを動きとして観察できる方法を模索した。安全性や測定方法の手順においては、ほぼ実施できるまでになった。そのため、(2)においても、おおむね順調に進展していると言える。今後、評価する観点の妥当性の検証が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究における今後の推進方策を下記の1から3に示す。1.初年度に考案した転倒予防体操(GUT体操)を実際に高齢者に指導する。対象となる高齢者は既に決定していることから、介入期間や実施方法の詳細を決定することが緊急の課題である。現時点では、6月~11月の5ヶ月間、転倒予防体操教室を実施し、GUT体操を指導実践する予定である。2.GUT体操指導前後に、代表的な各種バランス能力測定(開眼片足立ち、ファンクショナルリーチ、タンデム歩行、Timed up & goテスト)と本研究で開発した「転倒回避動作誘発ボード」で動きの観察し、その変容を見る。3.転倒回避動作との運動構造の類縁性に考慮した本研究の取り組みについて、1の実施と2の結果を踏まえて、その効果を明らかにする。さらに、高齢者を対象とした転倒予防体操の指導実践上の課題と可能性を展望として示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の研究費(初年度)では、研究のスタートということで、物品の支出が主であった。さらに、研究の中間報告のため、関連学会に2回参加(日本体育学会、日本体操学会)したため、旅費としても使用した。しかしながら、当初予定していた謝礼の支出がなかったため、26.031円が残額となった。次年度の研究費(2年目)では、転倒予防体操教室の実施に関わる費用を支出する予定である。具体的には、施設使用費や用具費、雑費である。さらに、その前後に行う測定では、補助を得るため、測定協力者(3名)への謝礼が必要になる。また、研究成果を関連学会で発表予定であるため、旅費として使用する。関係学会での発表を2回(日本体育学会、日本コーチング学会)予定している。最終年度として、研究報告書の作成および考案したGUT体操のポスター・DVDを作成するためにも研究費を使用する。
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