研究概要 |
本研究の目的は、肥満や代謝症候群(MetS)のコホート1275例を基盤に、簡易食物摂取調査票と心血管病(CVD)リスクの定期的測定による「摂取栄養素とアディポサイトカインに基づく心血管病予防の為の効果的な肥満・MetSの栄養指導の確立」である。 申請者は肥満症116例において、EPAによる末梢血単球の炎症惹起タイプ(M1)と抗炎症タイプ(M2)への影響を検討した。高脂血症合併90例では、非合併26例より単球中M2マーカー・IL-10の発現が有意に低値であった。肥満症43例においてEPAの3ヶ月投与により、TGとPWVの低下、EPA/AA比、アディポネクチンや単球中IL-10発現の上昇を認め、EPAによるPWV改善には単球中IL-10とアディポネクチンの上昇が関連していた。また、THP-1細胞においてEPA投与によるIL-10上昇はPPARαではなくPPARγを介すること、ChIPアッセイなどよりEPAがPPARγのIL-10プロモーターへの結合を増加させ、IL-10発現を上昇する事を証明し、EPAによるPPARγを介した単球M1/M2タイプの質的改善作用がCVD予防に寄与する可能性を報告した(Diabetes Care 35, 2012)。 更に、他の脂肪酸分画についても注目し、DHA/AA比やDGLA/AA比に比べ、EPA/AA比の変化量が心血管病リスク指標CAVIの改善と強い関連性を認めており、現在投稿中である。 また、肥満症54例にエストロゲン様作用を有する大豆イソフラボン・エクオールの効果を検討した所、エクオールによる血糖、LDL-CやCAVIの改善効果を認めた(Clin Endocrinol 78, 2012)。 本研究により、各栄養素の新しい機能性に立脚した健康的な食生活の指針の提案が可能となり、CVD予防の為の新しい機能性食品の開発に繋がる可能性がある。
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