研究課題/領域番号 |
23700828
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
岩中 伸壮 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (80584002)
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キーワード | ミオグロビン / ミトコンドリア / 骨格筋細胞 |
研究概要 |
骨格筋収縮時において、有酸素性エネルギー代謝の中心的役割を担うのはミトコンドリアであり、ミトコンドリアへの円滑な酸素供給は有酸素性エネルギー代謝活性の維持に重要である。筋細胞外から筋細胞内のミトコンドリアへの酸素供給は、筋細胞内に存在する色素タンパク質であるミオグロビン(Mb)によって効率的に行われると考えられており、平常時は筋内に酸素を貯蔵する役割も果たす。本研究は1.Mbタンパク質の発現増加メカニズムの解明と2.Mbタンパク質の増加が及ぼすミトコンドリア機能への影響の検証といった2つの目的がある。本年度は前年度に引き続き、ラット由来骨格筋細胞L6を対象として、Mb発現を活性化させると推測されるシグナル経路の活性化剤を細胞培養液に添加し、Mbタンパク質とミトコンドリアマーカータンパク質(VDAC、COXIV)の発現亢進とシグナル伝達経路の探索を行った。前年度に用いた薬剤よりも特異的なシグナル伝達経路活性化剤を数種類分化誘導培地に添加し、72時間培養したところ、Mbタンパク質発現は有意に増加した。これらの結果から、これまでに報告されていなかったシグナル伝達機構を介してMbタンパク質が合成される可能性が示唆された。また、更に詳細なシグナル経路の検証を行うため、Mb遺伝子プロモーター領域のレポーターアッセイを行った。先行研究で示唆されているMb発現とカルシウムシグナルとの関連性についても細胞内カルシウムイメージング法を用いて検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Mb発現メカニズムの解明において、転写因子(PGC-1α、NFATなど)の解析は重要である。しかし、これらの転写因子は細胞質と核の両方に存在するタンパク質であるため、ウェスタンブロット法による検出が困難であったことと再現性が乏しかったことから転写因子の検出に予想以上に時間を費やした。また、計画の変更に伴い、新たな実験系の構築が必要となり、その準備にも予想以上に時間を費やした。よって、研究推進がやや遅れていると判断した。しかしながらMbタンパク質発現メカニズムの解明に大きく貢献できる知見が揃いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにシグナル伝達経路と転写因子の特定、Mbタンパク質発現の鍵となる刺激に関して一定の成果が得られている。今年度はMbタンパク質発現メカニズムのさらに詳細な解明とミトコンドリア呼吸活性、生合成に関しての研究推進を図り、成果をまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
補助事業期間の延長が承認され、次年度の研究遂行においても経費執行が必要であることから若干の未使用額を生じさせた。 現在遂行中の研究対象であるラット骨格筋細胞を培養するための細胞培養用消耗品に加え、細胞に刺激を与える刺激試薬、また、そのシグナル反応を評価するための抗原抗体反応試薬に未使用助成金を使用する予定である。
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