研究課題/領域番号 |
23700831
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松永 哲郎 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10452286)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 自律神経 / 胃運動 / 心拍変動 / 胃電図 / 遺伝子多型 / 食事 |
研究概要 |
1. 食事における応答には個人差が存在する。この個人差を規定する要因の解析は、生活習慣病など疾患の理解および予防を実現する上で非常に重要な指標を提供するものと考えられる。本研究では、食事における自律神経や胃運動の応答の個人差に関与する遺伝要因、環境要因の多面的解析を実施する。2. 胃運動に関与する遺伝要因としてGタンパク質β3サブユニット(GNB3)における多型(C825T, rs5443)を解析対象とした。若年健常者131名を本研究の対象者とし、身長、体重、血圧など基礎データを取得し、胃運動は空腹時と白飯(300 kcal)摂取後の胃電図解析により評価した。BMIおよび平均血圧と胃電図の主要周波数、正常波成分比率との間に空腹時、食後ともに負の相関が認められた。また、GNB3 C825T多型との関連解析の結果、TT保有者で非保有者(CT, CC)に比して、食後の胃電図の主要周波数、正常波成分比率が有意に低値を示した。このことから、BMIや血圧の上昇は胃運動の低下に関与していること、またGNB C825T多型が食後の胃運動低下に関連することが明らかとなった。3. コーヒー摂取が胃運動および自律神経活動に与える効果を検討した。若年健常者24名を対象にコーヒー、カフェインレスコーヒー、お湯(260 ml)をロールパン(285 kcal)とともに摂取させた(クロスオーバー試験)。胃電図解析の結果、コーヒーに食後の胃運動亢進作用があることが示唆された。また、コーヒーにはエネルギー消費量の増加や自律神経活動(心拍変動解析)の賦活化の効果が認められ、これらはカフェインレスコーヒーには認められなかった。さらに、コーヒーの自律神経活動に対する効果は常飲者(≧1cup/日)でより高値であった。これらの結果から、コーヒー摂取後の自律神経の応答には普段の摂取頻度が関わっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、食事における自律神経および胃運動の応答の規定要因について環境要因と遺伝要因の双方から多面的に解析することである。今年度は遺伝要因として、Gタンパク質のβ3サブユニット(GNB3)の遺伝子多型(C825T, rs5443)を取り上げ、本多型が若年健常時からすでに食後の胃運動に関与していることを明らかとした。また、食事応答に対する生理反応として、コーヒーを研究対象とし、コーヒーの摂取が胃運動亢進、自律神経活動の亢進をもたらし、これらコーヒー摂取による応答には、普段のコーヒーの摂取頻度が関連していることが明らかとなった。これらの結果は、食事に対する生理応答の個人差の要因の一つとして重要な情報を提供する者と期待される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、食事における自律神経および胃運動応答に関与する遺伝要因、環境要因について、解析対象の遺伝子多型、生活習慣要因(食習慣など)を増やし、さらに多くのパラメータを解析に組み込んで、多変量解析を実施することで、関連要因の影響度の定量的な評価を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、複数の遺伝子多型のgenotypingを実施するため、ゲノムDNA抽出試薬、リアルタイムPCR関連試薬、プラスチック消耗品などを購入する。また、心電図、胃電図記録用の電極、電池、試験食の購入に加え、研究成果発表に伴う諸費用に使用する。
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