研究課題/領域番号 |
23700838
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
斉藤 靖和 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (90405514)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 細胞老化 / アスコルビン酸 / 酸化ストレス |
研究概要 |
ビタミンC (VC;アスコルビン酸(AsA))は、その多彩な生理機能以外にも水相における活性酸素を捕捉する"迅速性"において優れた抗酸化物質として知られており、様々な酸化ストレス関連疾患における防御成分として重要な役割を果たしている。また、AsAは組織・細胞内に高濃度蓄積されることが知られており、この高濃度蓄積がAsAの様々な生理機能の発揮において重要な因子であると考えられている。しかしながら、その一方で、老化に伴う体内VCレベルの低下が報告されており、AsA輸送能や蓄積性の変化と加齢や酸化ストレス関連疾患との間には何らかの関連性があると推測される。そこで、細胞老化に伴う細胞老化に伴う酸化ストレス応答性およびVC要求性の変化を検証するために以下の研究を実施した。1)正常ヒト胎児由来の線維芽細胞OUMS-36の老化細胞の取得のその評価を行った。2)老若細胞間での細胞内酸化ストレスレベルの違いとAsA投与による影響について検討した。3)老若細胞間でのAsA取り込みの相違と細胞内への輸送を司る輸送担体SVCT(sodium-dependent vitamin C transporter)1および2の発現の違いについて検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度は50%と自己評価する。その理由として、申請書において目的として記述した、1)加齢に伴う細胞内AsA量の変化とAsA特異的輸送タンパク質の発現変化の解析、2)AsAが重要な役割を果たしている生理機能(細胞内酸化ストレスレベル、抗酸化作用、コラーゲン合成、色素沈着)と加齢との関連性解明とその制御という2つの目的に対して、正常ヒト胎児由来の線維芽細胞OUMS-36においては、概ね一通り検討が終了しており、加齢に伴う変化について一つの仮説に到達できたと判断しており、達成度は高いと考えている。しかしながら、これまでの研究で老化細胞の方が細胞内AsAレベルが高いといった予想外ではあるが興味深い結果が新たに得られており、この点がまだ解明できていないこと、他の細胞での加齢に伴う変化などが不明である点は今後の検討すべき課題と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をふまえて、今後の研究では以下の点に絞って進めていく。1)これまでの研究で明らかとなった正常ヒト胎児由来の線維芽細胞OUMS-36における加齢に伴う細胞内AsAレベルの上昇の原因を究明するために、老若細胞間で発現している遺伝子レベルの違いについて検証を行う。また、酸化ストレスに対する老若細胞の抵抗性を比較し、その相違の原因についても検証する。2)他の細胞での検討により、これまでに分かっている事象が普遍的なものなのか、それとも、特定細胞における変化なのかどうかを検証する。3)通常の培養による細胞老化の誘導だけでなく、薬剤等による細胞老化誘導モデルを用いた解析についても検討する。研究成果は適宜、学会発表を行うと共に、論文等により積極的に国内外への情報発信を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては、上記推進方策に基づき、細胞培養関連試薬、生化学用分析試薬、成果発表用経費に充てる予定である。備品については初年度に計画通り、ケミルミ装置購入しており、新たな備品を購入する予定はない。予算の関係上、申請用時に記載していたSVCT抗体作製の委託については見送る方向で考えている。また、次年度に使用する予定の研究費が187,632円生じているが、これは当初の計画にあった液体窒素容器の購入が、凍結細胞保管スペースが別途確保できたことにより不要になったこと、また、ケミルミ装置の値引きや購入試薬のまとめ買い等による経費節減のためであり、次年度の試薬等の購入費用の一部として有効に活用する予定である。
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