研究課題/領域番号 |
23700840
|
研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
児玉 直樹 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 准教授 (50383146)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 軽度認知障害 / アルツハイマー型認知症 / 進行予測 / 脳萎縮 / コンピュータ支援診断システム |
研究概要 |
これまでに開発した認知機能データベースに登録された認知症患者および軽度認知障害患者のうち、2年以上に渡って経過観察をすることのできた患者を対象に、脳萎縮についての経時変化について検討した。対象は物忘れを主訴としてクリニックを受診し、認知機能データベースに登録され、2年以上に渡って脳萎縮を追跡調査することのできた168名である。初診時におけるCDR別VSRADでは、CDR0.5で2.285±1.392、CDR1で2.764±1.649、CDR2で3.010±2.040、CDR3で3.817±1.935であり、認知症の症状が進行するにしたがってVSRADは高い値となった。また、非移行群(CDR0.5→0.5)に比べて移行群(CDR0.5→1)の方が初診の段階においてVSRADの値が有意に高くなった(p<0.05)。しかし、移行群については2年経過後のVSRADについても有意に高い値となった(p<0.05)。なお、CDR1については、非移行群(CDR1→1)と移行群(CDR1→2)を比較しても初診時のVSRADに有意な差は認められなかった。このことから、初診時のVSRADに着目するとこで、軽度認知障害から短期間のうちにアルツハイマー型認知症へ移行する患者を予測できる可能性があるものと考えられ、認知症への移行予測として高い予測パラメータになるものと考えらた。今後、データベースに蓄積されるデータがさらに増えれば、より高い予測パラメータになるものと考えらた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに研究の目的に対して概ね順調に研究は進展しているものと考えられる。2年間の研究計画の1年目において、(1)これまでに追跡してきた健忘型軽度認知害患者の臨床経過やMRI画像の形態学的変化、認知機能検査の経時的変化について時系列のデータ解析を行い、アルツハイマー型認知症へ進行する群と進行しない群の相違を明らかにできたこと、(2)アルツハイマー型認知症へ進行する群と進行しない群の相違点から、健忘型軽度認知障害の早期診断および発症前診断が可能な因子を抽出できたこと、が主な理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は時系列データ解析用計算機および時系列データ解析関連図書の購入を行わなかった。これは、VSRADの時系列データ解析を中心に実施し、他のパラメータについては解析が進まなかったためである。時系列データ解析用計算機および時系列データ解析関連図書ついては次年度に購入し、脳形状の特徴や認知機能検査のサブ項目などの詳細な時系列解析を実施する予定である。さらに次年度は、(1)頭部MRI画像による脳萎縮の程度、脳形状の特徴や認知機能検査のサブ項目などの詳細な結果から客観的かつ定量的な情報を医師に提供し、健忘型軽度認知障害に対して適切な診断を促すことを支援するシステムを開発する、(2)健忘型軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への進行予測、アルツハイマー型認知症の予後予測について、医師および看護師や介護職員などの医療従事者、さらには患者とその家族へ客観的に提示することが可能なシステムを開発する予定である。なお、健忘型軽度認知障害に対して適切な診断を促すシステムの開発およびアルツハイマー型認知症への進行予測および予後予測システムの開発については、医学的な観点からシステムの評価を行い、不備な点を改良するだけではなく、医師および医療従事者が使いやすいシステムになるよう人間工学的な観点での検討を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は時系列データ解析用計算機および時系列データ解析関連図書を購入するとともに、システム開発用計算機、システム開発用ソフトウェアおよび関連書籍を購入する予定である。なお、システム開発用計算機は一般的な計算機よりも高性能の計算機が必要であるため、高性能なDELL製 Precision T7500を購入する予定である。システム開発用ソフトウェアは一般情報系企業で用いられているVisual Studio 2010を購入する予定である。研究成果を公表するために、国内旅費および外国旅費を使用する。なお、本研究は医療機関との綿密な打合せが必要であるため、年間8回の研究打合せ旅費を使用する予定である。さらに、神経内科医の専門的な知識は必要不可欠であるため、専門的知識提供として謝金を計上する予定である。なお、旅費(往復の交通費、宿泊費)、謝金は学内の規定に従って算出する。
|