研究課題/領域番号 |
23700843
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
馬場 猛 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80366450)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 心筋 / インスリン / 2型糖尿病 / 翻訳後修飾 |
研究概要 |
血糖値制御システムの破綻による糖尿病の発症が、脳卒中や心臓病などの病態を誘発する主要因の一つであり、血糖値調節機構を解明することが非常に重要だと考えられる。これまで、ラットの心筋における血糖値調節機構の探索を試み、その結果、血糖値上昇時、心筋においてのみ、リン酸化Aktと解糖系酵素:GAPDHが会合し、GAPDH自身もリン酸化を受けることを明らかにしてきた。またラット心筋由来のH9c2細胞株においても、インスリン刺激依存的にリン酸化AktとGAPDHが会合し、GAPDHのリン酸化に伴い、酵素活性が亢進することも明らかにした。本研究では、GAPDHを介したインスリンシグナルに関して、リン酸化やニトロ化等の翻訳後修飾を通じて、シグナルネットワークの時空間的変化の詳細を解明することを目的とした。H9c2細胞株を、最終濃度100nMのインスリンで時間を追って刺激した後、細胞株に対して直ちに細胞溶解液を調製した。各細胞溶解液に対して抗GAPDH抗体で免疫沈降を行い、抗リン酸化抗体、および抗6ニトロトリプトファン抗体を用いてウエスタンブロットを行った結果、インスリン刺激に伴い、GAPDHは時間と共にトリプトファンのニトロ化レベルが亢進し、5分後にピークを迎えた。一方GAPDHのリン酸化はインスリン刺激後、15分でピークを迎えた。従ってGAPDHはインスリン刺激後リン酸化に先んじて、トリプトファンのニトロ化が亢進することが明らかとなった。今回の成果であるGAPDHのリン酸化やニトロ化といった多彩な翻訳後修飾の事実は、ダイナミックな変化を伴うシグナル分子の時空間的制御の解明にふさわしい現象であり、この詳しい機構の検討により高次のシグナル伝達の仕組みが明らかになることが期待される。またGAPDHのさらなる機能解明は糖尿病やそれに伴う心疾患に対する治療開発に結びつくと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新知見も得られているので、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
蛍光タンパク質を用いた視覚的発現解析系によるGAPDHの細胞内局在の検討、さらシグナル伝達の‘場’として機能するマイクロドメインLipid raftとの関係を分子生物学的手法を用いて解析し、時空間的にダイナミックな変化を伴う高次のシグナル伝達の仕組み解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
・物品費(抗体、細胞培養関連等)に700,000円・成果発表に50,000円・実験補助に100,000円・その他印刷費等に50,000円を予定している。
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