研究課題/領域番号 |
23700848
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
木村 哲也 立命館大学, スポーツ健康科学部, 助教 (60533528)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 健康科学 / 神経生理学 / 生体工学 / 加齢 / 転倒予防 |
研究概要 |
本研究では、これまで見過ごされてきた体性感覚情報(触覚・固有感覚)の歩行バランスに対する効果及びそのフィードバック制御則を明らかにし、その上で神経生理学的観点に着目した新たなバランス補助器具を考案する。初年度は基礎的知見を得るため、健常若年者を対象とし、身体動揺情報を体性感覚から得た場合の歩行バランスの変調とその神経生理学的メカニズムを明らかにする実験を行った。実験は、通路に長さ16mの手すりを被験者の腰の高さに設置した。被験者は、上肢の示指腹側で手すりに軽く触れながら(ライトタッチ)歩行を行った。指先腹側に薄いロードセルを貼付し、ライトタッチが力学的な姿勢支持とならないよう、接触力の上限を2Nと設定した。この実験条件で、身体動揺情報を手指先体性感覚から得た際の歩行動作の変調を計測した。具体的に、重心動揺(腰部3軸加速度センサー)、関節運動(中間6mでの区間でのモーションキャプチャ測定)、左右肢の踏力(フットスイッチ)、左右の各活動筋の筋電図を記録した。一方で、指先腹側のロードセルから指先の得る圧覚の変動を記録した。実験装置の作成、パイロット実験、本実験を終え、現在、ライトタッチによる歩行時の身体動揺の変調、指先感覚から歩行制御までのフィードバック制御則・入出力特性を検討する解析に取り組んでいる。さらに触覚情報に焦点を絞り追加実験を行った。実験条件は上述の実験系において、手すりの代わりに長さ16mの水路を被験者の腰の高さに設置した。被験者は上肢の示指指先を水中に入れながら歩行を行った。即ち、被験者は示指触覚から身体動揺に関するフィードバック情報を得ることができる。こちらの実験に関しても、同様の解析を現在進めている。この一連の研究は、指先体性感覚の歩行バランス制御機構に対する貢献とそのメカニズムを明らかにするものであり、基礎的知見として重要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パイロット実験の過程で、より正確なデータを取得するために、実験環境の変更(歩行路の長さ、使用するセンサの変更)を若干行ったが、交付申請書に記載した「研究の目的」、「研究実施計画」に合致した実験を順調に進めることができている。実験装置の作成・プロトコル作成の際に、各分野(神経生理学、バイオメカニクス、生体医工学)の研究協力者の助言を仰ぎ、より正確なデータを取得することができた。また、現在進めているデータ解析においても研究協力者とのディスカッションを行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究(研究(1))で得られた基礎的知見を、応用に向けてさらに発展させるための具体的検証を行う。また、研究成果を学会・論文にて発表する。<研究(2)>研究(1)で得られた基礎的知見の高齢者での検討高齢者に対して研究(1)と同様の測定を行うことにより、歩行時の体性感覚フィードバック制御則に関して、若年者と高齢者の一致点及び相違点を明らかにし、応用研究につなげる。<研究(3)>視覚情報と体性感覚情報の効果の比較、及び両フィードバック情報の相乗効果の検討さらに、若年者を対象とし、視覚の遮断条件で研究(1)と同様の測定を行う。その結果から、体性感覚情報と視覚情報、それぞれの歩行バランスに対する効果に関して比較を行う。さらに、体性感覚情報と視覚情報が同時に得られる場合の相乗効果について検証する。これらの結果は、視覚情報の加齢による低下が顕著な高齢者への応用のための基礎的知見となる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究で、次年度の実験に用いる実験環境は整っている。ただし、次年度は高齢者を被験者とした測定、さらに視覚遮断における測定である。従って、本年度も十分安全面を確保した実験装置を作成しているが、さらなる不測の事態を考慮しハード面において実験装置の改良が必要である。従って、次年度の研究費の使用計画は、実験装置の改良、電極などの消耗品等が主である。さらに論文発表、研究発表のための資料費、旅費等が必要である。
|